スペック早見表

慣性モーメント(イナーシャ)の計算 早見表(公式・換算・GD²)

慣性モーメント(イナーシャ)J[kg·m²]は回転の速さの変えにくさを表す量で、円板・中実円柱(中心軸まわり)は J=mD²/8(m: 質量kg、D: 直径m)です。形ごとの公式、平行軸の定理、減速機・ボールねじ・ベルトを通したモーター軸への換算、GD²との関係(GD²[kgf·m²]の数値=4×J[kg·m²]の数値)と、密度1g/cm³の円板のJの表を、式から計算してまとめました。

🌀 慣性モーメント 判断即答ボックス

円板・丸棒(中心軸)のJは?mD²/8=mr²/2。m: 質量kg、D: 直径m
GD²(kgf·m²)をJ(kg·m²)にするには?4で割るGは重量kgf、Dは回転直径=慣性半径√(J/m)の2倍(外径ではない)
1/10に減速した先の負荷はモーター軸で?Jの1/100J÷i²(i=モーター軸÷負荷軸の回転速度=10)。損失は含まない
リード10mmのボールねじで1kgを動かすと?0.02533×10⁻⁴kg·m²J=m(P/2π)²。ねじ軸自身のJは別に足す
同じ材料・厚さで直径を2倍にすると?Jは16倍質量4倍×直径の2乗4倍(J∝D⁴)
軸から離れた位置の部品は?J=Jg+m·L²平行軸の定理。L: 重心と回転軸の距離
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表1: 形ごとの慣性モーメントの公式

形(回転軸)慣性モーメント J記号と条件
中実円柱・円板
中心軸まわり
mD²/8
=mr²/2
D: 直径(r: 半径)。厚さ・長さに関係なく同じ式。密度ρからは J=ρπLD⁴/32(L: 厚さ・長さ)
中空円柱(パイプ・リング)
中心軸まわり
m(D²+d²)/8D: 外径、d: 内径、m: 穴を除いた質量
薄肉円筒
中心軸まわり
≒mD²/4肉厚が直径に比べて十分薄いときの近似。D: 肉厚の中心の直径
円柱
重心を通り中心軸に直角な軸
m(D²/16+L²/12)D: 直径、L: 長さ
直方体
重心を通り辺cに平行な軸
m(a²+b²)/12a・b: 回転軸に直角な2辺(辺cの長さは式に入らない)
細い棒
重心を通り棒に直角な軸
mL²/12L: 長さ。太さを無視できるとき
細い棒
端を通り棒に直角な軸
mL²/3=mL²/12+m(L/2)²(平行軸の定理)
小さな物体(質点)
回転軸から距離r
mr²物体の大きさを無視できるとき
平行軸の定理
重心から離れた軸まわり
Jg+mL²Jg: 重心を通る平行な軸まわりのJ、L: 重心と回転軸の距離

※ m: 質量[kg]、長さ[m]で入れると J は kg·m² です(mmで入れると kg·mm²=10⁻⁶kg·m²)。どの式も密度が一様な物体の式です。形が組み合わさった部品は、部分ごとのJ(同じ回転軸まわり)を足し、穴の部分は引きます。

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表2: モーター軸への換算の式

つながり方モーター軸に換算した J記号と条件
減速機・歯車・プーリで減速JL÷i²JL: 負荷軸まわりのJ。i=モーター軸の回転速度÷負荷軸の回転速度(負荷軸がモーター軸の1/10の回転速度ならi=10)
ボールねじ・送りねじで直線運動m×(P÷2π)²m: テーブル・ワークなど直線で動く質量、P: ねじ1回転あたりの移動量(リード)[m]
ベルト・チェーン・ラックとピニオンで直線運動m×Dp²/4Dp: プーリ・スプロケット・ピニオンのピッチ円直径[m](1回転の移動量 P=πDp)
全体各部のJの合計モーター自身のJ、カップリング、ねじ軸・プーリ・歯車自身のJも、モーター軸に換算してから足す

※ 運動エネルギーが等しくなるように換算した式で、減速機・ねじ・ベルトの損失(効率)・ガタ・伸びを含まない理論式です。減速機の先にボールねじがあるときは、ねじ軸まわりに換算した値をさらにi²で割ります。

表3: 密度1g/cm³の円板・丸棒のJ(×10⁻⁴kg·m²)

直径 D
mm
厚さ(丸棒なら長さ)mm
1510203050100
200.00015710.00078540.0015710.0031420.0047120.0078540.01571
300.00079520.0039760.0079520.015900.023860.039760.07952
400.0025130.012570.025130.050270.075400.12570.2513
500.0061360.030680.061360.12270.18410.30680.6136
600.012720.063620.12720.25450.38170.63621.272
800.040210.20110.40210.80421.2062.0114.021
1000.098170.49090.98171.9632.9454.9099.817
1200.20361.0182.0364.0726.10710.1820.36
1500.49702.4854.9709.94014.9124.8549.70
2001.5717.85415.7131.4247.1278.54157.1
2503.83519.1738.3576.70115.0191.7383.5
3007.95239.7679.52159.0238.6397.6795.2
40025.13125.7251.3502.7754.01,2572,513
50061.36306.8613.61,2271,8413,0686,136
600127.2636.21,2722,5453,8176,36212,723
800402.12,0114,0218,04212,06420,10640,212
1000981.74,9099,81719,63529,45249,08798,175

※ J=ρπtD⁴/32(ρ=1,000kg/m³=1g/cm³)を中心軸まわりで計算した値です。材料の比重(≒密度g/cm³の数値)を掛けると、その材料の値になります(比重・密度の値は比重・密度の早見表)。Jは厚さに比例するので、表にない厚さは比例で求められます。単位の ×10⁻⁴kg·m² は kg·cm² と同じです。直径・厚さは計算の例として選んだ値です。

表4: ボールねじで質量1kgを動かすときのJ

リード P
mm
モーター軸換算のJ
×10⁻⁴kg·m²
10.0002533
20.001013
40.004053
50.006333
60.009119
80.01621
100.02533
120.03648
150.05699
160.06485
200.1013
250.1583
300.2280
320.2594
400.4053
500.6333

※ J=m(P÷2π)²の m=1kg の値です。動く質量(kg)を掛けます。ねじ軸自身のJ(中実円柱 mD²/8)とカップリングのJは別に足します。リードは計算の例として選んだ値です。

表5: ベルト・ラックで質量1kgを動かすときのJ

ピッチ円直径 Dp
mm
1回転の移動量
πDp mm
モーター軸換算のJ
×10⁻⁴kg·m²
1031.420.25
1547.120.5625
2062.831
2578.541.5625
3094.252.25
40125.664
50157.086.25
60188.509
80251.3316
100314.1625
120376.9936
150471.2456.25
200628.32100

※ J=m×Dp²/4 の m=1kg の値で、割り切れる値です。動く質量(ベルト・チェーンの質量を含む)を掛け、プーリ・スプロケット・ピニオン自身のJを足します。従動側のプーリが同じ直径なら同じ回転速度で回るので、そのJもそのまま足します。

表6: 慣性モーメントの単位換算

単位1単位 = ? kg·m²1kg·m² = ? 単位
kg·cm²10⁻⁴10,000
kg·mm²10⁻⁶1,000,000
g·cm²10⁻⁷10,000,000
g·mm²10⁻⁹1,000,000,000
kgf·m·s²9.806650.1019716
kgf·cm·s²0.098066510.19716
lb·ft²0.0421401123.73036
lb·in²2.926397×10⁻⁴3,417.172
oz·in²1.828998×10⁻⁵54,674.75

※ kgf·m·s²は重力単位系のJ(1kgf=9.80665N)です。GD²(kgf·m²)はJとは別の量で、数値は J(kg·m²)の4倍です(J=GD²÷4。下の「GD²との関係」)。lb・in・ft・ozは計量単位令 別表第七の定義(1ヤード=0.9144m、1インチ=ヤードの1/36、1フィート=ヤードの1/3、1ポンド=0.45359237kg、1オンス=ポンドの1/16)から計算しました。割り切れない値は有効数字7桁です。

使い方

  • 負荷のJを出す — 部品の形ごとに表1でJを出し(円板・丸棒は表3)、減速機・ボールねじ・ベルトを通るものは表2でモーター軸に換算して足します。例: 直径100mm・厚さ10mm・密度1g/cm³の円板は0.9817×10⁻⁴kg·m²。材料の比重を掛けます。
  • 穴のある円板・プーリ — 同じ厚さなら、外径の値から穴の径の値を引きます。φ100・厚さ10mmにφ20の穴なら、φ100の値からφ20の値を引いて≒0.9802×10⁻⁴kg·m²(密度1g/cm³。丸める前の値で計算)。
  • 加速に要るトルク — T=J×α(T: N·m、α: 角加速度 rad/s²)。0から回転速度N[min⁻¹]までt秒で一定に加速するなら α=2πN÷(60t)。J=0.01kg·m²を0.5秒で1,500min⁻¹にするなら α≒314.2rad/s²、T≒3.142N·mです。負荷トルク・摩擦・効率の分は別に見込みます。
  • GD²で書かれた資料を読む — J(kg·m²)=GD²(kgf·m²)÷4。加速トルクをGD²のまま計算するなら T[N·m]=GD²×N÷(38.20×t)、T[kgf·m]=GD²×N÷(374.6×t)です(定数は 4×60÷2π と、それに9.80665を掛けた値)。

公式と換算の導き方

  • 定義 — J=Σm·r²=∫r²dm(rは回転軸からの距離)。回転の運動エネルギーはJω²/2、回転の運動方程式は T=Jα で、直線運動の mv²/2・F=ma の質量にあたる量です。
  • 円板 — 半径rの細い輪(質量 dm=ρ·2πr·t·dr)を0から半径Rまで足すと J=πρtR⁴/2=mR²/2=mD²/8。中空なら内半径から外半径まで足して m(D²+d²)/8 です。
  • 平行軸の定理 — 重心からLだけ離れた平行な軸まわりでは、各部の距離の2乗の和に m·L² が加わり、J=Jg+mL² になります。
  • 減速機の換算 — 負荷の運動エネルギー JLωL²/2 を、ωL=ωM÷i でモーター軸の角速度に直すと (JL÷i²)ωM²/2 になります。
  • 直線運動の換算 — ねじが1回転(2π rad)でP進むので v=P·ω÷2π。mv²/2=Jω²/2 から J=m(P÷2π)²。プーリ・ピニオンでは P=πDp なので J=m(Dp/2)²。
  • GD²との関係 — GD²は日本の機械・モーターの資料で慣用されてきた量で、G: 物体の重量[kgf]、D: 回転直径(慣性半径k=√(J/m)の2倍。外径ではない)とした G×D² です。この定義のもとで、1kgfは質量1kgに標準の重力加速度9.80665m/s²が働く力なので質量m kgの物体の重量はm kgfで数値が同じになり、GD²=m×(2k)²=4mk² の数値は J(kg·m²)の数値の4倍です。円板の回転直径は外径の1/√2で、外径を使うとGD²が2倍に出ます。なお、GD²を定めた法令・規格は当サイトでは確認していません。

間違えやすいポイント

  • 直径と半径 — 円板は mD²/8=mr²/2。直径で mD²/2 とすると4倍に出ます。
  • mmのまま計算する — mm・kgで入れると kg·mm²(×10⁻⁶でkg·m²)です。モーターの資料のJ(×10⁻⁴kg·m²など)と比べるときは単位をそろえます(表6)。
  • 減速比の向き — 負荷側のJをモーター軸に移すときは i² で割ります。掛けると i⁴ 倍の誤りになります。
  • GD²とJの取り違え — GD²(kgf·m²)とJ(kg·m²)は単位の形が似ていますが、数値は4倍違います。記号(GD²かJか)で確かめます。
  • kgf·m·s²とkg·m² — 重力単位系のJは、kg·m²の値の1/9.80665です。

よくある質問

Q1. 円板(円柱)の慣性モーメントの公式は?

A. 中心軸まわりはJ=mD²/8(=mr²/2)です(m: 質量kg、D: 直径m)。密度ρ・厚さLからは J=ρπLD⁴/32 で、直径100mm・厚さ10mm・密度1g/cm³なら0.9817×10⁻⁴kg·m²です。材料の比重を掛けると、その材料の値になります。

Q2. GD²と慣性モーメントJの換算は?

A. J(kg·m²)=GD²(kgf·m²)÷4です。GD²のGは重量(kgf)、Dは回転直径(慣性半径k=√(J/m)の2倍)とする慣用の定義で、質量m kgの物体の重量はm kgf(標準の重力加速度9.80665m/s²で定義)なので、GD²の数値はJの数値の4倍になります。Dは外径ではなく、円板の外径を使うとGD²が2倍に出ます。

Q3. 減速機を通した負荷の慣性モーメントは?

A. モーター軸に換算するとJ÷i²です。iはモーター軸の回転速度÷負荷軸の回転速度で、負荷軸がモーター軸の1/10の回転速度(i=10)なら負荷のJの1/100です。減速機の損失(効率)は含まない理論式です。

Q4. ボールねじで動かすテーブルの慣性モーメントは?

A. J=m×(P÷2π)²です(m: 動く質量kg、P: リードm)。リード10mmで質量10kgなら 10×0.02533=0.2533×10⁻⁴kg·m²です。ねじ軸自身のJ(中実円柱 mD²/8)とカップリングのJを別に足します。

Q5. ベルトやラックで直線に動かす負荷の慣性モーメントは?

A. J=m×Dp²/4です(Dp: プーリ・ピニオンのピッチ円直径m)。質量1kg・Dp 50mmなら6.25×10⁻⁴kg·m²です。プーリ・ピニオン自身のJも足します。

Q6. 回転軸から離れた位置にある部品の慣性モーメントは?

A. 平行軸の定理 J=Jg+m·L² で求めます(Jg: 部品の重心を通る平行な軸まわりのJ、L: 重心と回転軸の距離)。例えば質量2kg・Jg=0.001kg·m²の部品を回転軸から0.2mの位置に付けると 0.001+2×0.2²=0.081kg·m²です。

Q7. kg·cm²・lb·in²とkg·m²の換算は?

A. 1kg·m²=10,000kg·cm²で、「×10⁻⁴kg·m²」で表した数値はkg·cm²で表した数値と同じです。1lb·in²=2.926397×10⁻⁴kg·m²、1lb·ft²=0.04214011kg·m²です(ポンド・インチの定義から計算)。

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出典・参考

  • 計量単位令(平成四年政令第三百五十七号)別表第一 第一号(メートル)・第二号(キログラム・グラム)・第十二号(角速度)・第十三号(角加速度)・第十七号(回転速度: 毎分)・第十九号(密度: キログラム毎立方メートル・グラム毎立方メートル)・第二十号(ニュートン)・第二十一号(ニュートンメートル)、別表第四(接頭語 センチ・ミリ)、別表第五 第一号・第五号(接頭語を付したときの乗数)、別表第七 第一号・第二号(ヤード・インチ・フィート・ポンド・オンス) — e-Gov法令検索の現行条文(令和五年政令第三百七十六号による改正、2023年12月28日施行。2026年11月1日に取得)で確認
  • 計量法(平成四年法律第五十一号)第8条第1項(非法定計量単位の取引・証明での使用の禁止)、附則第3条第3項・附則別表第三(重量キログラムなどを平成11年9月30日まで法定計量単位とみなす経過措置) — e-Gov法令検索の現行条文(令和四年法律第六十八号による改正、2025年6月1日施行)で確認
  • 国際度量衡総会(CGPM)第3回(1901年) Declaration 2(重さ=質量×重力加速度、標準の重力加速度 980.665cm/s²) — 国際度量衡局(BIPM)、Proceedings of the 3rd CGPM (1901) p.70 — bipm.org
  • NIST Special Publication 811 (2008 Edition) Guide for the Use of the International System of Units (SI) — 米国国立標準技術研究所(NIST)。Table 11(1kgf=9.80665N)、Appendix B.3(oz·in²からkg·m²への換算の例)、B.8(kilogram-force、kilogram-force second squared per meter、注23)、B.9 MASS and MOMENT OF INERTIA(lb·ft²・lb·in²) — nist.gov
  • 公式(表1)と換算の式(表2)は、慣性モーメントの定義 J=∫r²dm と運動エネルギーの式から当サイトが導いたものです(導き方は本文)。

※ 表3〜表6の値は、表1・表2の式と単位の定義から当サイトが計算した値です。表1の公式は物体を細かく分けた数値積分と、表2の換算は運動エネルギー・運動方程式の計算と一致することを確かめています。表6のlb·ft²・lb·in²・oz·in²の係数はNIST SP 811の値と一致します。

※ 丸め(四捨五入): 表3・表4のJは有効数字4桁(1,000以上は整数)、表5のJは割り切れる値、1回転の移動量は小数第2位、表6の換算係数は割り切れない値を有効数字7桁にしています。

※ 重量キログラム(kgf)は、計量法の経過措置で平成11年9月30日まで法定計量単位とみなされていた単位で、現在は法定計量単位ではないため、取引・証明には原則として使えません(計量法第8条)。本ページのkgf・GD²は、古い資料の値を読むための換算として載せています。

※ 本ページの法令の確認は2026年11月時点のものです。改正されることがあるため、最新の原典を確認してください。

※ 本ページの式は、密度が一様な物体の式と、損失(効率)・ガタ・伸びを含まない理論式です。モーターの選定や装置の設計・安全の判断は、メーカーの資料と有資格者の確認のうえで行ってください。

※ 本ページの表・数値は、上記の出典をもとに当サイトが計算・編集(加工)して作成したものです。出典元の機関・団体が作成したものではありません。

最終更新: 2026-11-01

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