スペック早見表

掘削面の勾配 早見表(手掘りの地山掘削・作業主任者・点検)

手掘りで地山を掘るときの掘削面の勾配の上限は、地山の種類と掘削面の高さで決まり、その他の地山なら高さ2m未満は90度、2m以上5m未満は75度、5m以上は60度です(安衛則第356条)。掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削には、地山の掘削作業主任者の選任が必要です(施行令第6条第九号)。

⛏ 掘削勾配 判断即答ボックス

その他の地山を手掘り・高さ2m以上5m未満なら75度以下2m未満は90度、5m以上は60度以下
岩盤・堅い粘土を手掘り・高さ5m以上なら75度以下5m未満は90度以下(き裂のない岩盤は対象外)
砂の地山を手掘りするなら35度以下か高さ5m未満第357条第1項第一号
発破等で崩壊しやすい地山なら45度以下か高さ2m未満第357条第1項第二号
掘削面の高さが2m以上になるなら地山の掘削作業主任者技能講習修了者から選任(令第6条第九号)
土止め支保工を設けたら点検は7日をこえない期間ごと中震以上の地震・大雨等の後にも(第373条)
広告

このページについて

地山(自然の地盤)を手掘りで掘るときの掘削面の勾配の上限は、労働安全衛生規則(安衛則)第356条・第357条に、地山の種類と掘削面の高さごとの数値で決められています。ここでいう手掘りは「パワー・シヨベル、トラクター・シヨベル等の掘削機械を用いないで行なう掘削の方法」です(第356条第1項)。あわせて、明り掘削の作業(地山の掘削又はこれに伴う土石の運搬等の作業。第322条で定義)にかかわる作業主任者・点検・届出の数値を条文の区分のまま並べました。

表1: 手掘りによる地山の掘削面の勾配の上限 — 安衛則 第356条・第357条

地山の種類掘削面の高さ掘削面の勾配条項
岩盤又は堅い粘土からなる地山5m未満90度以下
(90度=垂直)
第356条第1項
5m以上75度以下
その他の地山2m未満90度以下
(90度=垂直)
第356条第1項
2m以上5m未満75度以下
5m以上60度以下
砂からなる地山—35度以下
又は 高さ5m未満
第357条第1項第一号
発破等により崩壊しやすい状態になっている地山—45度以下
又は 高さ2m未満
第357条第1項第二号
崩壊又は岩石の落下の原因となるき裂がない岩盤からなる地山—第356条の対象から除かれ、第357条にも挙げられていない(両条に勾配の数値の定めなし)第356条第1項括弧書き

※ 勾配は水平面からの角度(度)で、表の値「以下」とします(90度は垂直)。高さの境目は条文どおり「未満」「以上」で、例えばその他の地山で高さちょうど2mなら「2m以上5m未満」の75度以下です。掘削面に奥行き2m以上の水平な段があるときは、段で区切られたそれぞれを一つの掘削面とします(第356条第1項)。傾斜の異なる部分があって勾配が算定できないときは、基準に従い、それよりも崩壊の危険が大きくないように各部分の傾斜を保ちます(第356条第2項、第357条第2項で準用)。砂と崩壊しやすい地山は、勾配と高さのどちらかの条件を満たすよう定められています。「堅い粘土」などの区分を数値で判定する基準は条文にありません。

広告

表2: 勾配の上限と水平距離(計算値)

勾配1:n
鉛直1に対する水平
表1でこの角度が上限になる場合高さ2m高さ3m高さ4m高さ5m高さ6m高さ8m高さ10m
75度1:0.27その他の地山 2m以上5m未満/岩盤・堅い粘土 5m以上0.540.801.071.341.612.142.68
60度1:0.58その他の地山 5m以上———2.893.464.625.77
45度1:1.00発破等で崩壊しやすい地山(高さ2m以上で掘る場合)2.003.004.005.006.008.0010.00
35度1:1.43砂の地山(高さ5m以上で掘る場合)———7.148.5711.4314.28

※ 掘削面の下端(法尻)から上端(法肩)までの水平距離の最小値(m)を、高さ÷tan(勾配)で当サイトが計算したものです。1:nは小数第2位、水平距離は0.01m単位に四捨五入しています。「—」はその高さではこの角度が上限にならない欄です(例: その他の地山で高さ5m未満なら上限は75度か90度)。段のない一つの掘削面の場合で、勾配は上限なので、これより緩くするのは差し支えありません。度・%・寸勾配の換算は勾配換算へ。

表3: 地山の掘削・土止め支保工の作業主任者

作業(施行令第6条)数値の条件選任する作業主任者資格
第九号 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削(ずい道及びたて坑以外の坑の掘削を除く。)の作業(第十一号に掲げる作業を除く。)掘削面の高さ2m以上地山の掘削作業主任者
安衛則第359条
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習の修了者(安衛則第16条・別表第一)
第十号 土止め支保工の切りばり又は腹起こしの取付け又は取り外しの作業高さ・深さの条件は書かれていない土止め支保工作業主任者
安衛則第374条

※ 職務(第360条・第375条)は、作業の方法を決定し作業を直接指揮すること、器具・工具を点検し不良品を取り除くこと(土止め支保工作業主任者は材料の欠点の有無の点検も)、要求性能墜落制止用器具等と保護帽の使用状況を監視することです。第九号の条文は手掘りに限っていません。ずい道等の掘削(第十号の二)と、掘削面の高さ2m以上となる採石法の岩石の採取のための掘削(第十一号)は、それぞれ別の作業主任者です。選任したら氏名と行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示する等で周知します(安衛則第18条)。

表4: 点検・届出など数値や頻度のある規定

項目数値・時期内容条項
地山の点検(明り掘削)その日の作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後点検者を指名し、作業箇所と周辺の地山の浮石・き裂の有無と状態、含水・湧水・凍結の状態の変化を点検安衛則第358条第一号
発破後の点検発破を行った後発破箇所と周辺の浮石・き裂の有無と状態第358条第二号
土止め支保工の点検設けた後7日をこえない期間ごと・中震以上の地震の後・大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落、切りばりの緊圧の度合、部材の接続部・取付け部・交さ部の状態。異常があれば直ちに補強又は補修第373条
昇降設備高さ又は深さが1.5mを超える箇所安全に昇降するための設備等を設ける(作業の性質上著しく困難なときを除く)第526条第1項
ガスの濃度測定
ガス導管からガスが発散するおそれのある場所の明り掘削
毎日作業開始前・異常時に測定。爆発下限界の30%以上で退避測定者を指名。30%以上なら直ちに作業従事者を退避させ、火気等の使用を停止し、通風・換気等第322条
計画の届出掘削の高さ又は深さ10m以上の地山の掘削/仕事の開始の14日前まで労働基準監督署長へ届出。ずい道等の掘削・岩石の採取のための掘削と、掘削機械を用いる作業で掘削面の下方に労働者が立ち入らないものを除く。計画の作成には資格を有する者を参画させる安衛法第88条第3項・第4項、安衛則第90条第四号・第91条第2項・第92条の2

※ 「中震以上の地震」「大雨」を震度や雨量で示す数値は条文に書かれていないため、このページでは載せていません。計画の届出は、数次の請負契約で行われる場合、仕事を自ら行う発注者がいるときはその発注者以外、いないときは元請負人以外の事業者には適用されません(安衛法第88条第5項)。

数値のない主な規定(明り掘削・土止め支保工)

  • 作業箇所等の調査(第355条) — 崩壊や埋設物等の損壊のおそれがあるときは、あらかじめ、形状・地質・地層、き裂・含水・湧水・凍結、埋設物等、高温のガス・蒸気をボーリングその他適当な方法で調べ、掘削の時期と順序を定めます。
  • 崩壊等の防止(第361条) — 崩壊や土石の落下で危険を及ぼすおそれのあるときは、あらかじめ土止め支保工を設け、防護網を張り、立入りを禁止する等の措置をとります。
  • 埋設物・ガス導管(第362条・第363条) — 埋設物等や近接するれんが壁・コンクリートブロック塀・擁壁等の損壊で危険を及ぼすおそれがあれば、補強・移設等の措置の後でなければ作業できません。露出したガス導管は、つり防護・受け防護等による防護か移設等で守ります。掘削機械・積込機械・運搬機械の使用でガス導管・地中電線路等を損壊して危険を及ぼすおそれがあるときは、これらの機械を使いません。
  • 土止め支保工の組立図(第370条) — 矢板・くい・背板・腹おこし・切りばり等の部材の配置・寸法・材質と、取付けの時期・順序を示した組立図を作り、そのとおり組み立てます。
  • 部材の取付け(第371条) — 切りばりと腹おこしは矢板・くい等に確実に取り付け、圧縮材(火打ちを除く)の継手は突合せ継手とし、切りばり・火打ちの接続部と切りばりどうしの交さ部は当て板とボルト、溶接等で堅固にします。
  • その他 — 運搬機械等の運行経路の周知(第364条)、後進して接近するとき等の誘導者(第365条)、保護帽の着用(第366条)、必要な照度の保持(第367条)。

使い方

  1. 掘り方を確かめる — 表1の勾配の数値は手掘りの規定です。掘削機械による掘削でも、崩壊のおそれがあれば第361条の措置が求められます。
  2. 地山の種類を当てはめる — 岩盤又は堅い粘土/その他/砂/発破等で崩壊しやすい状態、のどれに当たるかを確かめます(判定の数値基準は条文にありません)。
  3. 掘削面の高さを決める — 奥行き2m以上の水平な段があれば、段ごとに一つの掘削面です。
  4. 表1で上限の勾配を引き、表2で必要な水平距離の目安を見ます。
  5. 人と点検を手配する — 掘削面の高さ2m以上なら地山の掘削作業主任者、切りばり・腹起こしの取付け・取り外しなら土止め支保工作業主任者を選任し、表4の時期に点検します。

間違えやすいポイント

  • 二つの「2m」を取り違える — その他の地山を垂直(90度)まで手掘りできるのは高さ2m未満、作業主任者の選任が必要になるのは掘削面の高さ2m以上です。ちょうど2mは、勾配75度以下で作業主任者も必要です。
  • 勾配の表は機械掘削にもそのままかかると思う/機械なら何も決まりがないと思う — 第356条・第357条の数値は手掘りが対象です。一方、作業主任者(令第6条第九号)・点検(第358条)・崩壊等の防止(第361条)の条文は、手掘りに限っていません。
  • 砂も75度・60度で掘る — 砂は第356条の表から除かれ、35度以下にするか高さ5m未満にします(第357条)。
  • 「き裂のない岩盤」は対策不要と思う — 第356条・第357条の勾配の数値の対象外というだけで、崩壊や落石のおそれがあれば第361条・第534条の措置が求められます。
  • 「浅いから」と昇降設備を省く — 高さ又は深さが1.5mを超える箇所の作業には、安全に昇降するための設備等が必要です(作業の性質上著しく困難なときを除く。第526条)。

勾配が決められている理由

安衛則第534条は、地山の崩壊や土石の落下のおそれがあるとき、地山を安全な勾配にする、擁壁・土止め支保工等を設ける、雨水・地下水等を排除する、などの措置を事業者に求めています。第356条・第357条は、手掘りの場合の勾配の上限を数値で定めており、掘削面が高いほど、また砂や崩壊しやすい地山ほど上限の角度が小さくなっています。理由は条文に書かれていませんが、一般に、掘削面は高く急なほど崩れようとする力が大きくなり、砂は粒どうしがくっつく力が小さいため急な面を保ちにくい、と説明されます(当サイトによる説明)。

よくある質問

Q1. 手掘りの掘削面の勾配は何度以下?

A. その他の地山は高さ2m未満90度・2m以上5m未満75度・5m以上60度、岩盤又は堅い粘土は5m未満90度・5m以上75度が上限です(第356条)。砂と崩壊しやすい地山は第357条で別に定められています。

Q2. 砂の地山を手掘りするときの勾配は?

A. 35度以下とするか、掘削面の高さを5m未満とします(第357条第1項第一号)。発破等で崩壊しやすい地山は45度以下か高さ2m未満です。

Q3. 地山の掘削作業主任者は何mから必要?

A. 掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削です(令第6条第九号)。技能講習の修了者から地山の掘削作業主任者を選任します(安衛則第359条)。条文は手掘りに限っていません。

Q4. バックホウなど機械で掘る場合も勾配の表を使う?

A. 第356条・第357条の勾配の数値は手掘りが対象です。機械掘削でも、崩壊や土石の落下のおそれがあれば土止め支保工・防護網・立入禁止などの措置が必要です(第361条)。

Q5. 土止め支保工の点検の頻度は?

A. 設けた後7日をこえない期間ごとと、中震以上の地震の後、大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後です(第373条)。

Q6. 掘削面の途中に段があるときの高さは?

A. 奥行き2m以上の水平な段があれば、段で区切られたそれぞれが一つの掘削面です(第356条第1項)。段ごとの高さで勾配を見ます。

Q7. 掘削工事で計画の届出が必要になるのは?

A. 掘削の高さ又は深さが10m以上の地山の掘削を行う仕事は、開始の14日前までに労働基準監督署長へ計画を届け出ます(安衛法第88条第3項・安衛則第90条第四号)。機械掘削で掘削面の下方に労働者が立ち入らないものなどは除かれます。

Q8. 土止め支保工の作業主任者は深さに関係なく必要?

A. 施行令第6条第十号の切りばり・腹起こしの取付け・取り外しの作業には高さ・深さの条件が書かれていません。技能講習の修了者から土止め支保工作業主任者を選任します(安衛則第374条)。

関連する早見表

出典・参考

  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号) — 第16条・別表第一(作業主任者の選任)、第18条(作業主任者の氏名等の周知)、第90条第四号・第91条第2項・第92条の2第2項(計画の届出・参画者)、第322条(明り掘削の作業の定義・ガスの濃度の測定)、第355条〜第367条(明り掘削の作業 掘削の時期及び順序等)、第368条〜第375条(土止め支保工)、第526条(昇降するための設備の設置等)、第534条(地山の崩壊等による危険の防止) — e-Gov法令検索の現行条文(令和8年厚生労働省令第116号による改正、2026年10月1日施行)で確認
  • 労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号) — 第6条第九号・第十号・第十号の二・第十一号(作業主任者を選任すべき作業) — e-Gov法令検索の現行条文(令和8年政令第196号による改正、2026年10月1日施行)で確認
  • 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号) — 第14条(作業主任者)、第88条第3項〜第5項(計画の届出等) — e-Gov法令検索の現行条文(令和7年法律第33号による改正のうち2026年10月1日施行分まで)で確認

※ 本ページの数値は2026年10月時点で確認した出典(e-Gov法令検索の現行条文)にもとづきます。公布済みで2027年以降に施行される改正を反映した条文でも、本ページで扱う条の文言に変更がないことを確認しています。改正されることがあるため、最新の原典を確認してください。

※ 表1・表3・表4は条文の転記と要約で、数値の丸めはしていません。表2は表1の角度から当サイトが計算した値です(1:nは小数第2位、水平距離は0.01m単位に四捨五入)。

※ 本ページは条文の数値を引くための早見表で、条文の読み方は当サイトの整理です。掘削作業の可否・安全の判断は、地山の掘削作業主任者・土止め支保工作業主任者のもとで、所轄の労働基準監督署の確認のうえで行ってください。設計・施工・法令適合の判断は、原典と有資格者・所管行政庁の確認のうえで行ってください。

※ 本ページの表・数値は、上記の出典をもとに当サイトが計算・編集(加工)して作成したものです。出典元の機関・団体が作成したものではありません。

最終更新: 2026-10-14