アイボルト使用荷重早見表|M8〜M30の吊り荷重と角度による制限(JIS B 1168)
アイボルトで一番危険な誤解は「2本で吊れば2倍積める」です。JIS B 1168は1本の垂直吊りと2本45度吊りの使用荷重を同じ値として規定しています。呼び径別の使用荷重と、角度が開くほど張力が増える倍率を1枚で確認できます。
🪝 吊り荷重 判断ボックス
このページについて
アイボルトは「ねじ込むだけで吊れる」手軽さゆえに、荷重の考え方を誤ったまま使われがちな部品です。本ページはJIS B 1168(アイボルト)にもとづく使用荷重の考え方と、吊り角度による張力の増え方を確認するための早見表です。個別の吊り作業の可否・方法の判断は、玉掛け有資格者と社内の作業基準・機器メーカーの指定によってください。数値はメーカー・材質(鋼・ステンレス)で異なるため、現物の刻印とカタログが最終的な正です。
表1: 呼び径と使用荷重(JIS B 1168の考え方)
| 呼び | 1本 垂直吊り (=2本45度吊りと同値) | 保証荷重 (使用荷重の3倍) |
|---|---|---|
| M10 | 約1.47kN(約150kgf) | 4.41kN |
| M12 | 約2.16kN(約220kgf) | 6.47kN |
| M16 | 約4.41kN(約450kgf) | 13.24kN |
※ JIS B 1168は「使用荷重」と、その3倍の「保証荷重」を規定しています。本表は保証荷重の規定値(M10=4.41kN・M12=6.47kN・M16=13.24kN)から使用荷重を逆算した参考値です。M8以下・M20以上を含む全呼びの正確な値は、JIS B 1168の付表または使用するメーカーのカタログで確認してください(材質・製法により異なります)。
表2: 吊り角度と1本あたりの張力(2本吊り)
| 吊り角度(ワイヤー間) | 1本あたりの張力 | 0度を1.00としたときの倍率 |
|---|---|---|
| 0度(真上に平行) | 荷重 × 0.50 | 1.00 |
| 30度 | 荷重 × 0.52 | 1.04 |
| 60度 | 荷重 × 0.58 | 1.16 |
| 90度 | 荷重 × 0.71 | 1.41 |
| 120度 | 荷重 × 1.00 | 2.00 |
| 150度 | 荷重 × 1.93 | 3.86 |
※ 張力 = 荷重 ÷ 2 ÷ cos(吊り角度÷2) による計算値(検算: 120度なら 1÷2÷cos60°=1÷2÷0.5=1.00)。120度で1本あたり荷重と同じ張力がかかります。アイボルトでは加えて首元への曲げが効くため、吊り角度は60度以内に抑えるのが実務の基本です。
やってはいけない使い方
- 「2本だから2倍」で荷を決める — JISは1本垂直と2本45度を同値としています。分散しても許容は増えません。
- 保証荷重を上限として使う — 保証荷重は使用荷重の3倍(試験値)。安全率を自分で削る行為です。
- アイの向きを合わせるために緩め戻す — 座面が浮くとねじ部に曲げが集中します。完全ねじ込みが原則。
- 横引き・斜め引き — アイの面外方向には極端に弱い。スイベル式の吊り金具を使います。
- ねじ穴の深さ・材質を確認せず使う — アルミや樹脂の相手材では、ボルトが持ってもねじ穴が先に壊れます。
- 変形・伸び・ねじ山つぶれの再使用 — 一度大きな荷重を受けた吊り金具は交換が原則です。
荷重が増える理由
2本で吊っても許容が増えないのは、力が「分散する効果」と「角度で増える効果」がほぼ打ち消し合うためです。2本に分ければ1本あたりは半分になりますが、ワイヤーが開くほど斜め方向の張力が増え、さらにアイボルトの場合はねじ首に曲げモーメントが加わります。JISが1本垂直と2本45度を同じ値に揃えているのは、この2つの効果を織り込んだ実用的な取り決めです。
実務で押さえるべきは、角度は「荷を安定させるため」に必要だが、開きすぎれば金具が負けるという綱引き。だから玉掛けでは吊り角度60度以内が合言葉になります。吊り具まわりではワイヤロープ・ローラーチェーン、ねじの基礎はボルト強度区分・締付けトルクとあわせてどうぞ。
よくある質問
Q1. アイボルト2本で吊れば荷重は2倍になる?
A. なりません。JIS B 1168は1本の垂直吊りと2本の45度吊りを同じ使用荷重としています。角度が開くと首元に曲げが加わるためです。
Q2. 吊り角度が開くとなぜ危険なのか?
A. 張力が幾何的に増えるからです。2本吊りで60度=荷重×0.58、90度=0.71、120度=1.00(1本で全荷重相当)。アイボルトはさらに曲げが加わります。
Q3. 使用荷重と保証荷重の違いは?
A. 保証荷重=使用荷重の3倍の試験荷重。守るべきは使用荷重で、保証荷重を運用上限と読むのは安全率を削る誤用です。
Q4. アイボルトはどこまでねじ込めばいい?
A. 座面が相手材に密着するまで完全に。向きを合わせるための緩め戻しは厳禁で、向き調整が要るならスイベル式の吊り金具を選びます。
Q5. アイボルトに横向きの力をかけてもいい?
A. 不可です。アイの面外方向には極端に弱く、横引き・斜め引きが避けられないならスイベルタイプの吊り金具を使用してください。
Q6. 玉掛け作業に資格は必要?
A. 必要です。つり上げ荷重1トン以上は玉掛け技能講習、1トン未満でも特別教育が労働安全衛生法で義務づけられています。
関連する早見表
出典・参考
- JIS B 1168「アイボルト」 — 使用荷重・保証荷重(使用荷重の3倍)の規定、1本垂直吊りと2本45度吊りの扱い
- ねじ・吊り金具メーカーの技術資料 — 呼び別の保証荷重値(M10=4.41kN・M12=6.47kN・M16=13.24kN)、ねじ込み・使用方向の注意
- 張力の角度係数 — 張力=荷重÷2÷cos(吊り角度÷2)による計算値
※ 本ページは規格の考え方を引くための早見表です。実際の吊り作業の可否・吊り具の選定・荷重判断は、玉掛け有資格者、社内の作業基準、機器メーカーの指定に従ってください。材質(ステンレス等)や製品仕様により使用荷重は異なります。
最終更新: 2026-09-11