スペック早見表

溶接記号早見表|JIS Z 3021 基本記号・補助記号と寸法表記の読み方

図面の溶接記号(JIS Z 3021)の読み方を、基本記号(すみ肉・I形・V形・レ形など)・補助記号(全周溶接・現場溶接・仕上げ)・寸法表記(脚長・溶接長・ピッチ)の3ステップで整理。基線の上下=矢の側/反対側のルールから「6△50-100」のような数値の読み方まで、画像を使わないテキスト表で素早く確認できます。

📌 まずこれだけ: よく出る溶接記号 TOP7

表記意味補足
⊿(直角三角形)すみ肉溶接T継手・重ね継手で最頻出
記号が基線の下側矢の側を溶接「下=矢の側」が大原則
記号が基線の上側矢の反対側を溶接上下の取り違えに注意
V / ‖ / レV形・I形・レ形開先突合せ継手の開先形状
交点の ○全周溶接矢と基線の交点に付ける
交点の黒旗現場溶接工場でなく現場で施工
6△50-100脚長6mm・長さ50mm・ピッチ100mmの断続すみ肉ピッチは中心間距離

※ 本ページの記号はUnicode文字による近似表記です。正式な記号の形状・比率は規格票の図によります。

このページについて

溶接記号は、溶接部の位置・開先の形・サイズ・施工条件・仕上げを図面上の1カ所で指示するための記号で、日本ではJIS Z 3021(溶接記号)に規定されています。本ページでは基本記号14種・主要補助記号・寸法表記の読み方を、図を使わずテキスト+表で整理しました。

機械設計者・製缶/鉄骨工場の作業者・溶接検査員・施工管理者まで、「この三角形は何?」「基線の上下で何が違う?」「6△50-100はどう読む?」といった現場で頻発する疑問に即答できる構成です。

溶接記号の構造: 矢・基線・尾

溶接記号は次の3要素で構成されます。

  • 矢(やじるし) — 溶接する継手(溶接部)を指す斜めの線。レ形・J形など片側だけ開先を取る場合は、矢を折れ線にして(折れ矢)開先を取る部材の面を指します。
  • 基線(きせん) — 水平に引く線。基本記号・寸法・補助記号はすべてこの線を基準に配置します。
  • 尾(お) — 基線の端に付ける「<」形。溶接方法・非破壊試験・特記事項などを文字で記載する欄で、指示がなければ省略します。
   レ ← 基線の上側の記号 =「矢の反対側」を溶接
 ─────────────────< … 基線(水平線)と尾(省略可)
   ⊿ ← 基線の下側の記号 =「矢の側」を溶接
  ╱
 ↙ 矢 … 溶接する継手を指す

最重要ルール: 溶接する側が矢の側なら記号は基線の下側、矢の反対側なら基線の上側。これを取り違えると裏表逆の溶接指示になります。なお、抵抗スポット・シームのように継手の板間で溶接され矢の側/反対側の区別が意味を持たないものは、記号を基線にまたがせて中央に描くことがあります。

基本記号一覧(JIS Z 3021)

記号列はUnicode近似表記。X形・K形・H形は基本記号を基線の上下に組み合わせた両面溶接の表し方です。下の入力欄で表の行を絞り込めます(未入力なら全行表示)。

記号(近似)名称記号の形と描き方主な適用場面
すみ肉溶接直角二等辺三角形。縦線を必ず左側にして描くT継手・重ね継手・角継手の隅部を三角形断面で溶接。最も使用頻度が高い
I形開先平行な短い縦線2本開先加工なし(直角の切断面のまま)の薄板突合せ継手
VV形開先V字形。ルート間隔は記号の中、開先角度は記号の外側に記入中厚板の突合せ継手。片面から溶接できる
レ形開先縦線+斜線(Vの片側だけ)。縦線を左側に描く片方の部材だけ開先を取る突合せ・T継手。折れ矢で開先側の部材を指す
XX形開先(両面V)V形記号を基線の上下に対称に組み合わせる厚板突合せの両面溶接。溶着量と角変形を低減できる
KK形開先(両面レ)レ形記号を基線の上下に組み合わせる厚板T継手・突合せの両面溶接
UU形開先U字形(底が丸い)厚板の突合せ継手。V形より開先断面積(溶着量)を減らせる
JJ形開先縦線+四分円(J字形)。縦線を左側に描く片方の部材だけU状の開先を取る継手
U/UH形開先(両面U)U形記号を基線の上下に対称に組み合わせる極厚板突合せの両面溶接
)(V形フレア溶接向かい合わせの円弧2つ丸棒同士・曲げ板同士など、湾曲面の間にできる開先(鉄筋のフレア溶接など)
|(レ形フレア溶接縦線+円弧丸棒と平板など、片側だけ湾曲した継手
プラグ溶接・スロット溶接門形(コの字を伏せた形)上板に設けた円穴(スロットは長円穴)に溶着金属を満たして下板と接合
スポット溶接円。板間で溶接される抵抗スポットでは基線にまたがせて描くことがある抵抗スポット・アークスポットによる点接合(薄板の重ね継手)
○+2本線シーム溶接円に平行な2本の線を重ねた形抵抗シームによる連続的な線接合(タンクなど気密が必要な重ね継手)

※ JIS Z 3021にはこのほか、へり溶接・肉盛溶接・ステーク溶接などの記号も規定されています。詳細な形状は規格票を参照してください。

補助記号一覧

基本記号に付け加えて、施工条件や表面の仕上げを指示する記号です。

記号(近似)名称付ける位置意味
全周溶接矢と基線の交点部材の全周にわたって溶接する
黒旗現場溶接矢と基線の交点工場ではなく据付け現場で溶接する
─(直線)平ら仕上げ基本記号に重ねる溶接部表面を平らに仕上げる(余盛を除去するなど)
⌒(凸の円弧)凸仕上げ基本記号に重ねる溶接部表面を凸形に仕上げる
⌣(凹の円弧)凹仕上げ基本記号に重ねる溶接部表面を凹形に仕上げる
G研削仕上げ表面形状記号に添えるグラインダによる仕上げ
M切削仕上げ表面形状記号に添える機械切削による仕上げ
Cチッピング仕上げ表面形状記号に添えるチッピング(はつり)による仕上げ

寸法表記の読み方

数値は基本記号を基準に、置く場所で意味が決まります。

  • 記号の左 — 断面に関する寸法。すみ肉の脚長、開先の深さなど。
  • 記号の中・外側ルート間隔は記号の中に、開先角度は記号の外側に記入。
  • 記号の右 — 溶接線方向の寸法。溶接長、断続溶接のピッチ(中心間距離)など。
  • — 溶接方法・非破壊試験・特記事項を文字で補足。
表記例読み方
6⊿(記号の左に6)脚長6mmのすみ肉溶接(連続)
6⊿50-100脚長6mm・溶接長50mm・ピッチ100mmの断続すみ肉溶接
基線の上下に6⊿50-100を向かい合わせに配置両側断続すみ肉(並列)。表裏同じ位置に溶接
基線の上下に6⊿50-100を互い違いに配置千鳥断続の両側すみ肉。表裏で溶接位置をずらす
Vの外側に60°・中に2開先角度60°・ルート間隔2mmのV形開先溶接
+交点に○全周すみ肉溶接

※ 断続溶接のピッチは「溶接部の中心から次の溶接部の中心までの距離」です。6⊿50-100なら溶接部間のすき間は100−50=50mmになります。

実務のハマりどころ

  • 矢の側/反対側の取り違え — 「記号が基線の下=矢の側」が原則。裏表逆に溶接すると開先が合わず手戻りになります。ISO 2553のシステムA(破線の識別線を使う欧州式)で描かれた海外図面は読み方が異なるため、方式の確認が先です。
  • 脚長とのど厚の混同 — 強度計算に使うのはのど厚(等脚なら約0.7×脚長)。脚長の数値をのど厚として扱うと強度を約1.4倍過大評価します。
  • ピッチを「すき間」と誤読 — 断続すみ肉の「50-100」のピッチ100は中心間距離。すき間100mmと解釈すると溶接量が不足します。
  • レ形・J形で開先を取る部材の誤認 — 折れ矢の先端が指す部材に開先を取ります。折れ矢のない指示は加工側が伝わらないトラブルの元です。
  • 記号の向きの崩れ — すみ肉・レ形・J形の縦線は常に左側。手描きスケッチで向きが崩れると別の記号に誤読されます。
  • 全周○・現場溶接旗の見落とし — 交点の小さな記号ですが、施工範囲と施工場所が変わる重要指示です。

使い方・選び方のポイント

使用場面

機械・製缶・鉄骨・造船図面の読解、溶接指示の作成、検査・施工管理での図面照合に使います。

よくある間違い

矢の側(基線の下)と反対側(上)の取り違え、脚長とのど厚の混同、断続すみ肉のピッチを溶接部間のすき間と誤読する例が典型です。

読み方・指示のコツ

①溶接位置(記号が基線の上か下か)→②溶接の種類(基本記号)→③寸法(左=断面、右=長さ・ピッチ)→④補助記号(全周・現場・仕上げ)の順に確認 ⑤記号で表しきれない条件は尾に文字で補足する。

溶接記号の成り立ちと規格の背景

溶接記号の基本記号は、継手の開先断面の形をそのまま図案化したものです。V形開先の記号はV字、U形はU字、すみ肉は三角形の断面そのもの。このため記号を覚えることは開先形状を覚えることとほぼ同義で、1本の基線に矢・基本記号・寸法・補助記号を集約することで、溶接部の位置・形状・サイズ・施工条件・仕上げまでを図面上の1カ所で漏れなく指示できます。

日本の溶接記号はJIS Z 3021に規定され、現行規格(JIS Z 3021:2016)は国際規格ISO 2553:2013との整合を図って改正されています。「矢の側=基線の下側」という配置は米国AWS方式とも共通ですが、ISO 2553のシステムA(欧州式)は基線に破線の識別線を添えて矢の反対側を表すなど方式間の差異があり、輸出品・海外調達品の図面ではどの規格・方式で描かれているかの確認が読み間違い防止の第一歩になります。

開先形状が多数あるのは、板厚・継手形式・溶接姿勢・アクセス性・コストのトレードオフがあるためです。開先はルート(継手の奥)まで溶込みを確保するための加工で、板が厚いほどV形からX形・U形のように、溶着量(=コスト・変形・残留応力)を抑えながら溶かし込める形状が選ばれます。設計者が記号一つで指定した開先が、現場の加工工数と溶接品質を直接左右します。

よくある質問

Q1. 溶接記号は基線の上と下のどちらに書きますか?

A. JIS Z 3021では、溶接する側が矢の側(矢が指している側)のときは基線の下側に、矢の反対側のときは基線の上側に基本記号を記載します。「下=矢の側、上=反対側」と覚えます。米国AWS方式も同じ配置ですが、ISO 2553のシステムA(欧州式)は基線に破線の識別線を添えて区別する方式のため、海外図面ではどの方式で描かれているかの確認が必要です。

Q2. すみ肉溶接の「脚長」と「のど厚」の違いは?

A. 脚長(z)は三角形断面の直角をはさむ2辺の長さ、のど厚(a)は継手ルートから溶接表面までの最短距離です。等脚のすみ肉では理論のど厚 a ≒ 0.7z(z×cos45°)。強度計算はのど厚断面で行うため、図面の脚長の数値をそのまま強度計算に使うと強度を過大評価してしまいます。

Q3. 「6△50-100」はどう読みますか?

A. 脚長6mmのすみ肉溶接を、溶接長50mmずつ、ピッチ(溶接部の中心間距離)100mmで断続的に行う指示です。記号の左の数値が断面寸法(脚長)、右の数値が溶接長とピッチを表します。ピッチは中心間距離であり、溶接部と溶接部のすき間(この例では50mm)ではない点に注意します。

Q4. 全周溶接と現場溶接はどう表しますか?

A. 全周溶接は矢と基線の交点に○を付け、部材の全周にわたって溶接することを表します。現場溶接は同じ交点に黒く塗りつぶした旗記号を立てて表します。両方を同時に付けることもできます(現場で全周を溶接する指示)。

Q5. レ形・J形開先でどちらの部材に開先を取るかはどう示しますか?

A. 矢を折れ線にして(折れ矢)、開先を取る部材の面を矢の先端で直接指します。レ形・K形・J形など片方の部材だけを加工する非対称な開先で用いる方法で、折れ矢がない図面では加工する側が伝わらないトラブルの原因になります。

Q6. V形とX形はどう使い分けますか?

A. 板厚と裏側へのアクセス性で選びます。V形は片面から溶接できる中厚板向けです。X形はV形を表裏に振り分けた形で、同じ板厚ならV形より開先断面積(溶着量)を減らせ、表裏対称に溶接することで角変形も抑えられます。ただし裏側からの溶接(反転またはアクセス)が必要です。

Q7. 補助記号のG・M・Cは何を意味しますか?

A. 溶接部表面の仕上げ方法の指示で、G=研削(グラインダ)仕上げ、M=切削(機械)仕上げ、C=チッピング仕上げです。表面形状の補助記号(平ら・凸・凹)と組み合わせて、例えば「平ら+G」ならグラインダで平らに仕上げる指示になります。

関連する早見表

関連規格・出典

  • JIS Z 3021「溶接記号」 — 本ページの基本記号・補助記号・表示方法の根拠規格
  • ISO 2553「Welding and allied processes — Symbolic representation on drawings — Welded joints」(参考) — 現行JISが整合を図る国際規格

※ 本ページの記号はUnicode文字による近似表記です。正式な記号形状・詳細規定は規格票をご確認ください。

最終更新: 2026-07-02