切削条件 早見表(材質×工具・回転数計算)
被削材(S45C/SS400/SUS304/アルミ/銅/鋳鉄) × 工具材種(ハイス/コート超硬) × 工具径から、推奨Vc・1刃送り・回転数・送り速度を計算します。エンドミル/ドリル両対応。
計算結果
計算式
主軸回転数 n [rpm] = 1000 × Vc ÷ (π × D) (Vc: 切削速度 m/min, D: 工具径 mm)
エンドミル送り F [mm/min] = fz × z × n (fz: 1刃送り mm/刃, z: 刃数)
ドリル送り F [mm/min] = f × n (f: 1回転送り mm/rev)
推奨Vc・fz 目安表(エンドミル)
| 被削材 | ハイス(HSS) | コート超硬 | ||
|---|---|---|---|---|
| Vc (m/min) | fz (mm/刃) | Vc (m/min) | fz (mm/刃) | |
| S45C(機械構造用炭素鋼) | 20〜30 | 0.03〜0.08 | 120〜180 | 0.05〜0.12 |
| SS400(一般構造用圧延鋼) | 25〜35 | 0.03〜0.08 | 150〜200 | 0.06〜0.15 |
| SUS304(オーステナイト系SUS) | 10〜20 | 0.02〜0.05 | 80〜120 | 0.03〜0.08 |
| アルミ(A5052/A2017) | 80〜150 | 0.05〜0.12 | 250〜500 | 0.10〜0.25 |
| 銅(C1100/C2801) | 50〜80 | 0.04〜0.08 | 150〜250 | 0.08〜0.15 |
| 鋳鉄(FC200/FC250) | 20〜30 | 0.05〜0.10 | 100〜150 | 0.10〜0.20 |
推奨Vc・送り 目安表(ドリル)
| 被削材 | ハイスドリル | 超硬ドリル | ||
|---|---|---|---|---|
| Vc (m/min) | 送り (mm/rev) | Vc (m/min) | 送り (mm/rev) | |
| S45C | 15〜25 | 0.12〜0.40 | 30〜70 | 0.20〜0.40 |
| SS400(軟鉄含む) | 20〜30 | 0.16〜0.40 | 35〜80 | 0.20〜0.50 |
| SUS304 | 5〜10 | 0.10〜0.28 | 15〜30 | 0.10〜0.30 |
| アルミ | 20〜35 | 0.25〜0.50 | 50〜200 | 0.25〜0.40 |
| 銅 | 30〜60 | 0.15〜0.35 | 80〜150 | 0.20〜0.40 |
| 鋳鉄 | 20〜35 | 0.25〜0.50 | 50〜70 | 0.25〜0.40 |
送りは工具径に応じて調整(小径は送り下限、大径は上限)。一般目安: ドリル送り ≒ 工具径×0.02(小径)〜0.04(大径) mm/rev。
工具材種別 補正係数(基準=コート超硬を1.0)
| 工具材種 | Vc 補正 | 送り補正 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ハイス (HSS) | × 0.15〜0.25 | × 0.5〜0.8 | 靭性高・断続切削強い・低速域 |
| 粉末ハイス (HSS-PM) | × 0.20〜0.30 | × 0.7〜0.9 | 高硬度材対応の高靭性ハイス |
| ノンコート超硬 | × 0.6〜0.7 | × 0.8〜1.0 | 非鉄・鋳鉄・低速鋼向き |
| コーテッド超硬 (TiN/TiAlN/AlCrN等) | × 1.0(基準) | × 1.0(基準) | 標準・汎用性高 |
| CBN | × 2.0〜4.0 | × 0.5〜1.0 | 焼入鋼・高硬度鋼専用 |
| ダイヤモンド (PCD) | × 3.0〜6.0 | × 1.0〜2.0 | 非鉄・樹脂・CFRP専用(鉄系不可) |
補正係数はコート超硬の推奨Vcに対する比率。例: S45Cをコート超硬で Vc=150 m/min → ハイスなら 150×0.2 ≒ 30 m/min。
加工条件による追加補正
- 湿式切削(水溶性油): +10〜30% Vc / 工具寿命延長
- 乾式切削: 基準値(アルミ・鋳鉄は乾式が基本)
- MQL(微量潤滑): 乾式と湿式の中間、-10〜+20%
- 機械剛性が低い: 送りを70〜80%に抑制
- 深穴・ポケット加工: 切屑排出不良でVc -20〜30%
- 突き出し長が長い: ビビリ対策でVc -30% & fz -30%
- 仕上げ加工: Vcは上げ、fz/fは下げる
回転数 逆引き表(工具径D × Vc → n)
| 工具径D (mm) | Vc 20 | Vc 30 | Vc 80 | Vc 120 | Vc 150 | Vc 200 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| φ3 | 2,120 | 3,180 | 8,490 | 12,700 | 15,900 | 21,200 |
| φ4 | 1,590 | 2,390 | 6,370 | 9,550 | 11,900 | 15,900 |
| φ6 | 1,060 | 1,590 | 4,240 | 6,370 | 7,960 | 10,600 |
| φ8 | 796 | 1,190 | 3,180 | 4,770 | 5,970 | 7,960 |
| φ10 | 637 | 955 | 2,550 | 3,820 | 4,770 | 6,370 |
| φ12 | 531 | 796 | 2,120 | 3,180 | 3,980 | 5,310 |
| φ16 | 398 | 597 | 1,590 | 2,390 | 2,980 | 3,980 |
| φ20 | 318 | 477 | 1,270 | 1,910 | 2,390 | 3,180 |
単位: Vcはm/min、表中の値は回転数n [rpm](n=1000×Vc÷(π×D)、有効数字3桁に丸め)。Vc20〜30はハイス×鋼、Vc80〜120は超硬×SUS304〜S45C、Vc150〜200は超硬×炭素鋼の代表域。機械の上限回転数を超える欄は、上限で運転して実Vc=πDn÷1000を逆算し送りを再計算します(FAQ参照)。
切削速度と工具寿命のトレードオフ
切削加工では、刃先が材料を削る点で摩擦と塑性変形により高温が発生し、工具の刃先が摩耗していきます。切削速度を上げるほど加工能率は上がりますが、温度上昇で工具寿命は急激に短くなります(テイラーの工具寿命方程式で知られる関係)。
このため、被削材と工具材種の組み合わせごとに「能率と寿命が釣り合う経済的な切削速度」が存在します。送りと切込みは仕上げ面の粗さと能率に影響し、荒加工は大きく、仕上げは小さくとるのが基本です。
クーラントは冷却と潤滑によって工具寿命と面品質を改善します。びびり(自励振動)は機械・工具の剛性や切削条件で抑えるなど、条件全体のバランスで最適点を探ります。
現場で本当に起きる取り違え
最も多いのは切削速度Vc(m/min)と回転数n(rpm)の混同です。回転数は工具径ごとに引き直す値で、同じVcでも径が変わればnは全く別の数字になります。コート超硬でS45Cを削るVc=150 m/minは、φ10なら約4,770 rpmですが、φ3なら約15,900 rpm、φ20なら約2,390 rpmです。φ10で使っていた約4,770 rpmをφ20の工具にそのまま流用すると実Vcは約300 m/minと2倍の過速になり刃先が短時間で摩耗し、逆にφ3へ流用すると実Vc約45 m/minでは超硬には遅すぎて、構成刃先による面のムシレを招きます。
送りの単位は3種類あり、混同すると桁違いの条件になります。テーブル送りF(mm/min)・1回転送りf(mm/rev)・1刃送りfz(mm/刃)の関係は、ミルでF=fz×z×n、ドリルでF=f×nです。fz=0.08 mm/刃・2枚刃・n=4,800 rpmならF=768 mm/minですが、カタログのfz値0.08をそのまま機械のF欄に打ち込むと事実上のゼロ送りとなり、刃が削らずにこすれて逃げ面摩耗と焼付きが急速に進みます。旋盤はmm/rev、マシニングセンタはmm/minで指令するのが一般的という機械側の違いも、この取り違えの温床です。
SUS304では「怖いから送りを落とす」が逆効果になります。切削のたびに表層へ生じる加工硬化層(深さ数十μm〜0.1 mm程度)より送り・切込みが小さいと、刃先が硬い層の上を滑って削れず、摩耗だけが進む悪循環に入ります。Vcは表の下限側へ落としても、fzと切込みは硬化層を超える値を確保するのが基本です。ドリルで同じ穴のステップ戻しを増やしすぎたり穴底で空転させたりするのも、硬化を助長する典型例です。
条件出しの手順と現場での調整
手順は「被削材×工具材種で表からVcを引く → n=1000×Vc÷(π×D)で回転数を出す → fz(ミル)またはf(ドリル)から送り速度Fを出す」の3段です。初回は表のレンジの下限寄り、送りは計算値の80%程度から入り、切屑の色と音で判断して上げます。鋼の切屑が薄い黄褐〜茶色なら適正域、青紫なら熱過多でVcを1〜2割下げます。「キーン」というびびり音が出たら、送りを闇雲に下げるのではなく、回転数を10〜15%ずらすか突き出し長を詰めるのが先です。
被削材の読み違えにも注意してください。S45CとSS400の条件は近いものの、同じ「ステンレス」でも快削のSUS303と本表のSUS304では削りやすさが大きく違い、SUS304の条件をSUS440Cなどの硬い鋼種へ流用すると工具を欠損させます。アルミもA5052は粘くて構成刃先が出やすく、A2017・A7075より切れ刃の鋭さと潤滑が効きます。表にない材質は、成分・硬さが近い行を仮の起点にし、必ず下限側から試すのが安全です。
よくある質問
Q. HSSと超硬どちらを選ぶべき?
A. 生産性・仕上げ面・工具寿命は超硬が優位。ただし機械剛性が弱い・断続切削(鋳物の巣、溶接後ビード)ではHSSが破損しにくい面もあります。コストはHSSが数分の1。
Q. 送りが速すぎるとどうなる?
A. 工具折損・ビビリ・表面粗さ悪化の原因になります。目安の80%から始め徐々に上げてください。切屑が青紫色なら熱過多、黒なら焼き付き。
Q. SUS304でVcを下げる理由は?
A. オーステナイト系ステンレスは加工硬化が激しく、熱伝導率が低いため切削熱が工具に集中します。Vcを下げ、切り込みを深く(表層の硬化層を避けて)、潤滑を十分に行うのが基本。
Q. アルミで超硬を高速回転させるとムシレるのは?
A. 切れ刃先端の構成刃先が原因。鋭角な切れ刃、粗い送り、十分な潤滑、ダイヤモンドコート工具の使用で改善します。
Q. 機械の最高回転数が推奨Vcに届かないときは?
A. 出せる最高回転数で運転し、実際のVc(=πDn÷1000)を逆算して送り速度を再計算します。例えばφ3超硬でVc150 m/minを出すにはn≒15,900 rpmが必要ですが、機械上限が8,000 rpmならVc≒75 m/minで妥協し、F=fz×z×8,000で設定します。Vcの低下は工具寿命が延びる方向なので、失うのは主に加工能率です。
Q. 海外カタログのSFM表記はどう換算する?
A. 1 SFM(ft/min)=0.3048 m/minです。「500 SFM」はVc≒152 m/min、逆にm/minの値を3.28倍するとSFMになります。SFMをm/minと読み違えると約3.3倍の過速になり短時間で工具を焼損させるため、輸入工具・海外製カタログでは必ず単位を確認してください。
関連する早見表
出典・参考(参考値として記載)
※ 本ページの数値は工具メーカー各社の公開資料および業界一般の目安値を集約した参考値です。実加工では使用する工具メーカーのカタログ・推奨条件を優先し、機械剛性・冷却条件・加工剛性に応じて調整してください。
参考: 工具メーカー各社の公開技術資料・推奨切削条件。
検収: 本表のVc・fz・送りのレンジは主要工具メーカー公開カタログの推奨切削条件の範囲と照合(2026-07-18)。SFM換算は 1 ft = 0.3048 m の定義値に基づく。
最終更新: 2026-07-18