硬さ換算表|HRC・HV・HB・HS・引張強さの対応(SAE J417)
鋼の硬さの相互換算一覧。ロックウェルHRC⇔ビッカースHV⇔ブリネルHB⇔ショアHS⇔近似引張強さの対応(SAE J417の換算表による近似値)を収録。図面の「HRC58〜62」をHVの検査機で受けるとき、硬さから引張強さを見積もるときに。換算は近似であり、正式な判定は図面指定の試験方法によります。
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このページについて
硬さ試験は方式ごとに測っている量が違うため(圧子の形状・荷重・圧痕の読み方)、方式間の換算に理論式はなく、実測データにもとづく経験的な対応表が使われます。本ページは鋼について最も広く使われるSAE J417(1983年改訂)の換算表から、実務頻度の高いHRC 20〜68の範囲を抜粋したものです。HB欄の( )付きの値はタングステンカーバイド球による測定値、「—」は換算表に値がない(その方式の適用範囲外)ことを示します。
表1: 鋼の硬さ換算(SAE J417・近似値)
HB=ブリネル(10mm球・3000kgf)。( )はタングステンカーバイド球。引張強さは「近似引張強さ」で、( )内はkgf/mm²換算。HRC65以上の引張強さは換算表に規定がありません。
| ロックウェル HRC | ビッカース HV | ブリネル HB (10mm球3000kgf) | ショア HS | 近似引張強さ MPa (kgf/mm²) |
|---|---|---|---|---|
| 68 | 940 | — | 97 | — |
| 65 | 832 | (739) | 91 | — |
| 60 | 697 | (654) | 81 | — |
| 55 | 595 | 560 | 74 | 2075 (212) |
| 50 | 513 | (475) | 67 | 1760 (179) |
| 45 | 446 | 421 | 60 | 1480 (151) |
| 40 | 392 | 371 | 54 | 1250 (127) |
| 35 | 345 | 327 | 48 | 1080 (110) |
| 30 | 302 | 286 | 42 | 950 (97) |
| 25 | 266 | 253 | 38 | 840 (86) |
| 20 | 238 | 226 | 34 | 760 (77) |
※ 本表は鋼(鉄鋼材料)についての近似換算です。中間値(HRC58・62など)はSAE J417の1刻みの表または内挿で求めますが、いずれも近似であることは変わりません。非鉄金属には適用できません。
試験方法の使い分け
| 方式 | 圧子・原理 | 向いている対象 | JIS |
|---|---|---|---|
| ロックウェルC (HRC) | ダイヤモンド円すい・150kgf、深さを読む | 焼入れ鋼の日常検査。速い | JIS Z 2245 |
| ビッカース (HV) | ダイヤモンド四角すい、対角線を読む | 薄物・浸炭/窒化層・小物(荷重を小さくできる) | JIS Z 2244 |
| ブリネル (HB) | 10mm球・3000kgf、圧痕径を読む | 鋳物・鍛造品など不均一材の平均硬さ | JIS Z 2243 |
| ショア (HS) | ハンマの反発高さを読む | 大型部品・ロールの現場測定(可搬) | JIS B 7731 |
よくある間違い
- 換算値を規格値として扱う — 換算は近似です。「HRC58以上」の図面をHV換算値で合否判定してよいかは、発注元との取り決め(または同一方式での再測定)が必要です。
- 軟らかい材料をHRCで測る — HRC20未満の領域はCスケールの適用外で値が信用できません。生材・非鉄はHRBや他のスケールを使います。
- 薄物・表面処理層をHRCやHBで測る — 圧痕が深く、下地の影響や貫通で正しく測れません。薄物・硬化層はHV(低荷重)が基本です。
- HB球種の混同 — 高硬度域では標準球とタングステンカーバイド球で値が変わります。本表の( )はタングステンカーバイド球の値です。
- 非鉄への流用 — 本表は鋼専用です。アルミ・銅合金では硬さと強度の関係が別物です。
- 引張強さ欄の過信 — 「近似引張強さ」は目安です。強度保証は引張試験(JIS Z 2241)で行います。
硬さ換算のしくみと限界
硬さは長さや質量のような単一の物理量ではなく、「決められた条件で押し込んだ(またはぶつけた)ときの抵抗」を方式ごとに定義した工学量です。ロックウェルは押し込み深さ、ビッカースとブリネルは圧痕の大きさ、ショアは反発高さを読んでおり、そもそも測っているものが違います。だから方式間の関係は材料の塑性挙動を介した相関にすぎず、換算表は「鋼で実測したらこう対応した」という経験則の整理です。
それでも換算表が広く使われるのは、現場の測定機と図面の指定方式が一致しないことが日常だからです。SAE J417は米国自動車技術会がまとめた鋼用の換算表で、日本でも工具・金型・熱処理の現場で事実上の共通言語になっています。使う上での約束事は3つ——①鋼に限る ②近似と割り切る ③正式判定は指定方式で測り直す。この3つを守れば、換算表は非常に便利な道具です。
硬さと引張強さの相関(鋼でσB≒3.2×HB前後)は、どちらも塑性変形への抵抗を反映しているために成り立つ関係で、調質鋼の強度見積りによく使われます。ただし溶接部・加工硬化層・鋳物では相関が崩れやすく、これも目安の域を出ません。
よくある質問
Q1. HRCとHVの換算は正確ですか?
A. 正確な変換式は存在せず、あくまで近似です。硬さ試験は方式ごとに測っている物理量が違う(圧子の形・荷重・測る対象が深さか対角線か)ため、理論的な換算はできません。SAE J417などの換算表は鋼について実測データを整理した経験的な対応表で、材質(鋼以外)・熱処理状態によってはずれます。受入検査などで問題になる場合は、図面と同じ試験方法で測るのが原則です。
Q2. HRC・HV・HB・HSはどう使い分ける?
A. HRCは焼入れ鋼など硬い材料の日常検査向けで測定が速い。HVは荷重を小さくでき、薄物・表面処理層・小部品に向く。HBは圧痕が大きく、鋳物など組織が不均一な材料の平均的な硬さ向き。HSは反発式で持ち運びでき、大型部品・ロールの現場測定向きです。図面指定がある場合はその方式で測ります。
Q3. 硬さから引張強さがわかるのはなぜ?
A. 鋼では硬さ(押し込みに対する抵抗)と引張強さに強い相関があるためで、経験的にHB×約3.2MPa前後の関係が知られています。ただしこれは鋼の目安であり、換算表の引張強さも「近似引張強さ」です。強度保証が必要な場面では引張試験によります。
Q4. HRCとHRBの違いは?
A. どちらもロックウェル硬さですが、スケールが違います。Cスケール(HRC)はダイヤモンド圧子・150kgfで硬い材料(焼入れ鋼など、目安HRC20以上)用、Bスケール(HRB)は1.588mm鋼球・100kgfで軟らかい材料(生材・非鉄)用です。軟らかい材料をHRCで測る(またはその逆)と正しい値になりません。
Q5. HRC60の刃物とHRC40の部品はどのくらい違う?
A. 換算表ではHRC60=HV697、HRC40=HV392で、ビッカース硬さで約1.8倍の差です。HRC60級は工具鋼・刃物の焼入れ硬さ、HRC40級は強靭さと硬さを両立させた調質部品(シャフト・金型ベース等)の領域という違いになります。
Q6. アルミや銅にもこの換算表は使える?
A. 使えません。本ページの換算表は鋼(鉄鋼材料)についての経験的対応です。非鉄金属は硬さと強度の関係が別物で、ロックウェルもBスケールや別スケールを使います。非鉄の換算は材料ごとの資料を参照してください。
関連する早見表
- 鉄鋼・金属材料 — S45C・SKD11など材質記号と規格
- 表面粗さ — 同じく図面指定の読み方(Ra・Rz)
- ボルト強度区分 — 強度区分と機械的性質(硬さ規定あり)
- 表面処理・めっき記号 — 硬質クロム・窒化など硬さが絡む処理
- 切削条件 — 被削材の硬さと切削速度
出典・参考
- SAE J417 (1983) — 鋼の硬さ換算表(本ページの換算値の出典。国内でも各社技術資料に転載される事実上の標準)
- JIS Z 2245 / Z 2244 / Z 2243 / B 7731 — ロックウェル/ビッカース/ブリネル/ショア硬さ試験方法
※ 換算値はすべて近似値です。材質が鋼以外の場合、熱処理・加工状態が特殊な場合には適用できません。合否判定・強度保証は図面指定の試験方法・引張試験によってください。
最終更新: 2026-07-28