ピン規格早見表|平行ピン・テーパピン・スプリングピンの寸法と下穴
機械の位置決め・回り止めに使うピンの規格一覧。平行ピン(JIS B 1354・公差域m6/h8)、テーパピン(JIS B 1352・テーパ1/50)、スプリングピン(JIS B 2808・溝付き/二重巻き)の呼び径系列・外径・取付穴の寸法を収録。「スプリングピンの下穴は呼び径と同じ(H12)」「テーパピンの呼びは小端径」など、選定と穴加工で迷うポイントを1ページで確認できます。
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このページについて
ピンはボルトのような締結力は持たない代わりに、位置を正確に決める・回り止めする・抜け止めするための機械要素です。本ページでは使用頻度の高い3種類——平行ピン(JIS B 1354)・テーパピン(JIS B 1352)・スプリングピン(JIS B 2808)——の寸法と下穴の考え方をまとめています。掲載値は各JISの規定に基づく基準値・系列です。
表1: 平行ピン(JIS B 1354:2012)
公差域クラスはm6(プラス公差)またはh8(マイナス公差)。表面粗さはm6がRa≦0.8μm、h8がRa≦1.6μm。材料は鋼(熱処理なし/焼入焼戻しS43C〜S50C・255〜327HV30)とオーステナイト系ステンレス(210〜280HV30)。対応国際規格ISO 2338(MOD)。
| 項目 | 規定内容 |
|---|---|
| 呼び径の系列(mm) | 0.6・0.8・1・1.2・1.5・2・2.5・3・4・5・6・8・10・12・16・20・25・30・40・50 |
| 公差域クラス | m6(呼び径に対しプラス側) / h8(マイナス側) |
| 表面粗さ | m6: Ra≦0.8μm / h8: Ra≦1.6μm |
| 呼び長さの系列(mm) | 2〜32は2刻み(2,3,4,5,6,8,10,12,14,16,18,20,22,24,26,28,30,32)、以降35,40,45,50,55,60,65,70,75,80,85,90,95,100,120,140,160,180,200(200超は20刻み) |
| 材料 | 鋼(St): 熱処理なし、または焼入焼戻し(S43C〜S50C・255〜327HV30) / オーステナイト系ステンレス(A1): 210〜280HV30 |
| 端面の形状 | 受渡当事者間の協定による(面取り長さcの規定あり) |
※ 穴側のはめあいは設計者が決めます。目安として、固定側はリーマ仕上げの穴にm6ピンを圧入、位置決めで抜き差しする側はH7穴+h8ピンのようにすきまを持たせる使い方が代表的です(要求精度に応じて調整)。
表2: テーパピン(JIS B 1352)
| 項目 | 規定内容 |
|---|---|
| テーパ | 1/50(直径基準)。長さ50mmで直径が1mm変わる |
| 呼び径 | 小端(細い側)の径d。許容差はh10 |
| 呼び径の系列(mm) | 0.6・0.8・1・1.2・1.5・2・2.5・3・4・5・6・8・10・12・16・20・25・30・40・50 |
| 呼び長さの系列(mm) | 平行ピンと同じ系列(2〜200) |
| 材料 | 鋼(SUM22〜24L・SGD41-D・S43C〜S45C、焼入焼戻しはS43C〜S50C) / ステンレス(SUS303) |
| 大端径の計算 | 大端径 = 呼び径 + 長さ/50 (例: 呼び6×長さ50 → 大端約7mm) |
※ 穴はドリル下穴の後、テーパリーマ(1/50)で仕上げます。打ち込みでテーパ面が食い付き、分解・再組立てしても位置が正確に再現されるのが特徴です。対応国際規格ISO 2339。
表3: スプリングピン(JIS B 2808)— 外径と取付穴
取付穴の径はスプリングピンの呼び径と同じで、公差はH12(例: 呼び5→穴5mm H12)。ドリル穴のままで使え、リーマ仕上げ不要です。以下は使用頻度の高い「溝付き・一般荷重用」と「二重巻き・一般荷重用」の外径d1(ピン自由状態の実外径)。
| 呼び径 (=取付穴径 H12) | 溝付き 一般荷重用 外径d1 最小〜最大(mm) | 二重巻き 一般荷重用 外径d1 最小〜最大(mm) |
|---|---|---|
| 1 | 1.1〜1.2 | 1.05〜1.15 |
| 1.2 | 1.3〜1.4 | 1.25〜1.35 |
| 1.5 | 1.6〜1.7 | 1.62〜1.73 |
| 2 | 2.15〜2.25 | 2.13〜2.25 |
| 2.5 | 2.65〜2.75 | 2.65〜2.78 |
| 3 | 3.15〜3.25 | 3.15〜3.3 |
| 4 | 4.2〜4.4 | 4.2〜4.4 |
| 5 | 5.2〜5.4 | 5.25〜5.5 |
| 6 | 6.2〜6.4 | 6.25〜6.5 |
| 8 | 8.3〜8.6 | 8.3〜8.63 |
| 10 | 10.3〜10.6 | 10.35〜10.8 |
| 12 | —(重・軽荷重用系列) | 12.4〜12.85 |
| 13 | 13.4〜13.7 | — |
| 14 | —(重・軽荷重用系列) | 14.45〜14.95 |
| 16 | —(重・軽荷重用系列) | 16.45〜17 |
| 20 | —(重・軽荷重用系列) | 20.4〜21.1 |
※ JIS B 2808には溝付き(GH重荷重用/GS一般荷重用/GL軽荷重用)・二重巻き(CH/CS/CL)の6区分があり、区分により外径・肉厚・せん断荷重が異なります。「—」は当該区分の系列にない(他区分にはある)サイズです。荷重区分ごとの詳細・許容せん断荷重は規格表・メーカー資料を確認してください。
使い分けの目安
| 種類 | 穴の加工 | 特徴 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 平行ピン | リーマ仕上げ(精度が命) | 高精度な位置決め。m6=固定/h8=滑合 | 治具・金型・部品の位置決め(ノックピン用途) |
| テーパピン | テーパリーマ(1/50) | 打ち込みで食い付き、分解再現性が高い | 軸とボスの固定、分解を繰り返す位置決め |
| スプリングピン | ドリル穴のまま(呼び径H12) | 安価・穴精度不要・ばね性で保持 | 回り止め・抜け止め・ヒンジ軸などの汎用固定 |
よくある間違い
- スプリングピンの下穴をピン外径で開ける — 穴は呼び径と同じ(H12)です。外径(呼びより太い)で開けるとスカスカで保持力ゼロになります。
- 平行ピンの穴をドリル穴のままにする — 平行ピンは穴の精度で性能が決まります。リーマ仕上げが前提です(ドリル穴で良いのはスプリングピン)。
- テーパピンを逆から打つ・逆から抜く — テーパピンは小端側から抜きます。大端側から叩くと食い付きが強まるだけです。貫通していない穴には抜きタップ付き(ねじ付き)テーパピンを使います。
- 位置決めピンを1本で済ませる — 1本では回転方向が決まりません。2本を離して配置が原則です。
- スプリングピンの重ね使い(ピンの中にピン) — 二重に挿すと設計保持力になりません。せん断力が足りない場合はサイズアップか重荷重用を選びます。
- m6とh8の取り違え — 同じ呼びでも公差の符号が逆です。圧入すべき場所にh8を使うと抜け落ち、滑合すべき場所にm6を使うと組めません。
ピンのしくみと規格の背景
ボルト締結だけでは、部品は締付け面内でわずかに滑って位置が動きます。位置を「決める」のはボルトではなくピンの仕事で、機械設計では「締結はボルト、位置決めはピン2本」が基本形です。平行ピンとリーマ穴の組合せは数μm台の位置再現性を持ち、金型や治具では焼入れされた高精度のダウエルピン(ISO 8734系・メーカー規格)も広く使われます。
テーパピンは穴とピンの両方に1/50の同じテーパを持たせることで、打ち込むだけで隙間なく食い付き、抜けば必ず同じ位置に戻せるという、シンプルながら優れた再現機構です。一方スプリングピンは、ピン自身をばねにすることで穴の精度要求をなくした実用品で、「呼び径のドリル穴(H12)にそのまま打てる」手軽さから、回り止め・抜け止めの量産用途で圧倒的に使われています。
規格は平行ピンがJIS B 1354(ISO 2338対応)、テーパピンがJIS B 1352(ISO 2339対応)、スプリングピンがJIS B 2808(ISO 8748/8750/8752ほか対応)です。いずれも呼び径・長さの系列、材料と硬さ、外径公差が規定されており、本ページの値はその抜粋です。許容せん断荷重など強度の数値は荷重区分・材質で変わるため、規格表とメーカー技術資料で確認してください。
よくある質問
Q1. 平行ピンのm6とh8はどう使い分ける?
A. m6はプラス公差(呼び径よりわずかに太い)で、リーマ仕上げした穴に圧入して固定する用途向き。h8はマイナス公差(わずかに細い)で、抜き差しする位置決めやヒンジのような滑合(すきまばめ)向きです。JIS B 1354:2012では公差域クラスm6またはh8として規定され、表面粗さはm6がRa0.8以下、h8がRa1.6以下です。
Q2. スプリングピンの下穴(取付穴)は何mm?
A. 呼び径と同じ径の穴(公差H12)です。例えば呼び5のスプリングピンなら穴は5mm(H12)。ピンの外径は呼び径よりひと回り太く作られており(呼び5の溝付き一般荷重用で外径5.2〜5.4mm)、たわみながら穴に食い付いて保持します。リーマ仕上げは不要でドリル穴で使えるのがスプリングピンの利点です。
Q3. テーパピンの呼び径はどこの寸法?
A. 小端(細い側)の径です。テーパは直径で1/50。呼び6×長さ50のテーパピンなら、小端が約6mm、大端は6+50/50=約7mmになります。穴はテーパリーマで仕上げ、打ち込むとテーパどうしが食い付いて固定と高精度の位置再現を両立します。
Q4. 位置決めピンは何本使う? ノックピンとの関係は?
A. 2部品の位置決めは原則2本です(1本では回転が決まらず、3本以上は過拘束)。2本はできるだけ離して配置します。「ノックピン」「ダウエルピン」は位置決めに使うピンの通称で、規格上は平行ピン(JIS B 1354)や、焼入れされたダウエルピン(メーカー規格・ISO 8734系)が使われます。高精度・高硬度が必要ならリーマ穴+焼入れダウエルピンを選びます。
Q5. スプリングピンの溝付きと二重巻きの違いは?
A. 溝付き(スロッテッド)は1枚のばね鋼板をC形に丸めたもので、構造が単純で保持力が高め。二重巻き(コイルド)は板を2周強巻いたもので、ばね性が全周に分散し、繰返し荷重・衝撃に強く、相手穴を傷めにくい特徴があります。JIS B 2808ではそれぞれに重荷重用・一般荷重用・軽荷重用の区分があります。
Q6. ピンの材質は何を選ぶ?
A. 平行ピンは鋼(熱処理なし/焼入焼戻し)とオーステナイト系ステンレスがJIS B 1354に規定されています。スプリングピンはばね性が必要なため、ばね用炭素鋼(S60C系・SK85系)やSUS304-CSP/SUS420J2などのばね用ステンレスがJIS B 2808に規定されています。耐食性が必要ならステンレス、強度・耐摩耗が必要なら焼入れ品を選ぶのが基本です。
関連する早見表
出典・参考
- JIS B 1354:2012 — 平行ピン(呼び径系列・公差域m6/h8・長さ系列・材料。ISO 2338対応)
- JIS B 1352 — テーパピン(テーパ1/50・呼び径=小端径・h10。ISO 2339対応)
- JIS B 2808 — スプリングピン(溝付き・二重巻き各荷重区分の寸法、取付穴=呼び径H12。ISO 8748/8750/8752ほか対応)
※ 掲載値は各規格の基準値・系列の抜粋です。外径の許容差の詳細・許容せん断荷重・面取り形状などは規格本文とメーカー技術資料を確認してください。
最終更新: 2026-07-28