ボルト締付けトルク早見表|M3〜M30・強度区分別の目安値(N・m)
メートル並目ねじM3〜M30×強度区分4.6/4.8/8.8/10.9/12.9の標準締付けトルク目安値を一覧。算出条件はトルク係数K=0.2(潤滑なし)・目標軸力=耐力の70%で、計算式 T=K×F×d と根拠(JIS B 1082応力断面積・JIS B 1051強度区分)を明示しています。トルクレンチの設定値検討の出発点に。機器メーカー・図面の指定トルクがある場合はそちらが最優先です。
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このページについて
ボルトの締付けトルクは規格で一意に決まった値ではなく、「どれだけの軸力(締付け力)を出したいか」から計算で決める値です。本ページの表は、実務で広く使われる標準的な条件——トルク係数K=0.2(潤滑なし・表面処理なしの目安)、目標軸力=ボルト耐力の70%——で T=K×F×d により算出した参考値です。資料によって値が1〜3割違うのは、このKと軸力設定の想定が違うためです(下の「計算式と条件」参照)。取扱説明書・図面・施工要領書に指定トルクがある場合は必ずそちらに従ってください。
表1: 標準締付けトルク目安値(並目ねじ・K=0.2・軸力=耐力の70%)
単位はN・m。( )内のkgf・cm換算は約10.2倍(1N・m≒10.2kgf・cm)。強度区分8.8の耐力はM16以下640MPa・M18以上660MPa(JIS B 1051)で計算しています。
| 呼び (並目ピッチ) | 4.6 (N・m) | 4.8 (N・m) | 8.8 (N・m) | 10.9 (N・m) | 12.9 (N・m) | 参考: 軸力F 8.8のとき(kN) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| M3 (0.5) | 0.51 | 0.68 | 1.4 | 2.0 | 2.3 | 2.3 |
| M4 (0.7) | 1.2 | 1.6 | 3.2 | 4.6 | 5.4 | 3.9 |
| M5 (0.8) | 2.4 | 3.2 | 6.4 | 9.3 | 10.9 | 6.4 |
| M6 (1.0) | 4.1 | 5.4 | 10.8 | 15.9 | 18.6 | 9.0 |
| M8 (1.25) | 9.8 | 13.1 | 26.2 | 38.5 | 45.1 | 16.4 |
| M10 (1.5) | 19.5 | 26.0 | 52.0 | 76.3 | 89.3 | 26.0 |
| M12 (1.75) | 34.0 | 45.3 | 90.6 | 133 | 156 | 37.8 |
| M14 (2.0) | 54.1 | 72.1 | 144 | 212 | 248 | 51.5 |
| M16 (2.0) | 84.4 | 113 | 225 | 331 | 387 | 70.3 |
| M18 (2.5) | 116 | 155 | 319 | 455 | 532 | 88.7 |
| M20 (2.5) | 165 | 220 | 453 | 645 | 755 | 113 |
| M22 (2.5) | 224 | 299 | 616 | 877 | 1027 | 140 |
| M24 (3.0) | 285 | 380 | 783 | 1115 | 1305 | 163 |
| M27 (3.0) | 416 | 555 | 1145 | 1631 | 1909 | 212 |
| M30 (3.5) | 565 | 754 | 1555 | 2215 | 2592 | 259 |
※ 本表は潤滑なし(ドライ)・常温・座面が母材鋼のときの目安です。潤滑あり・亜鉛めっき・ステンレス・ガスケット座面などでは条件が変わります(下記解説参照)。ステンレスボルト(A2-70)はおおむね強度区分8.8の7〜8割程度の値が目安とされますが、かじり防止の観点からもメーカー資料に従ってください。
計算式と条件 — なぜ資料によって値が違うのか
締付けトルクの基本式は次のとおりです。
T = K × F × d
- T: 締付けトルク (N・m)
- K: トルク係数(ねじ面・座面の摩擦で決まる。潤滑なしで約0.2、潤滑ありで約0.11〜0.15)
- F: 目標軸力 (N)。一般に「耐力×応力断面積」の60〜90%に設定(本表は70%)
- d: ねじの呼び径 (m)
例: M10・強度区分8.8の場合 — 耐力640MPa × 応力断面積58.0mm²(JIS B 1082) × 0.7 = 軸力F≒26.0kN。T = 0.2 × 26000N × 0.010m = 52 N・m。
市販の資料でも「K=0.17・耐力の70%」なら本表の約85%、「K=0.14・耐力の90%」ならほぼ同等〜やや小さい値になります。値そのものより「どのKと軸力設定で計算された値か」を確認して使うことが重要です。
よくある間違い
- メーカー指定より表を優先する — 本表のような一般表は指定がないときの出発点です。指定トルクは座面条件・ガスケット・繰返し荷重まで織り込んだ値なので必ず優先します。
- 潤滑して同じトルクで締める — オイルやモリブデングリスを塗るとKが下がり、同じトルクで軸力が2〜5割増えます。締めすぎでボルトが降伏・破断する典型パターンです。
- 強度区分を確認せず8.8用トルクで締める — 頭部刻印のない並ボルト(4.6〜4.8相当)に8.8用トルクをかけると軸力が耐力を超えます。
- 高力ボルト(F10T)を目安表で締める — 鉄骨の摩擦接合は専用の施工法・検査(トルシア破断・ナット回転法など)が施工規準で決まっています。高力ボルトのページ参照。
- トルクレンチの測定範囲の端で使う — 範囲の下限・上限付近は精度が保証されません。設定値が範囲の20〜80%に入る機種を選びます。
- 二度締め・増し締めでカチカチ何回も鳴らす — プリセット形はカチッと1回で止めるのが正しい使い方です。鳴らすたびに軸力が積み増しされます。
- kgf・cmとN・mの取り違え — 1N・m≒10.2kgf・cm。古い図面のkgf・cm指定をN・mと読み違えると約10倍の締めすぎになります。
締付けトルクのしくみ
ボルト締結の目的はトルクをかけることではなく、軸力(ボルトが部材を締め付ける力)を出すことです。トルクはそのための手段で、かけたトルクの大半(9割前後)はねじ面と座面の摩擦に消え、軸力に変わるのは1割程度にすぎません。摩擦の状態を代表するのがトルク係数Kで、表面状態・潤滑・めっき・座面の材質で大きく変わります。だからトルク管理は本質的に「摩擦のばらつき込みの近似管理」であり、同じトルクでも軸力は±3割程度ばらつくとされます。
目標軸力は通常、ボルトの耐力(降伏点)に対して6〜9割の範囲で設定します。低すぎると緩み・疲労破壊の原因になり、高すぎると初期締付けや使用中の外力で降伏します。本表の70%は汎用的な中間設定です。より厳密な軸力管理が必要な箇所(エンジン・高圧フランジ・鉄骨など)では、回転角法・軸力計・専用施工法が使われます。締付けの方式・用語はJIS B 1083(ねじの締付け通則)に整理されています。
よくある質問
Q1. 締付けトルクの値はどうやって決まっている?
A. T=K×F×d(T:トルク、K:トルク係数、F:軸力、d:ねじ呼び径)で計算します。本ページの表はK=0.2(潤滑なし・表面処理なしの一般的な目安)、目標軸力F=ボルト耐力の70%×応力断面積(JIS B 1082)として算出した参考値です。同じボルトでもKの想定や軸力の設定(耐力の60〜90%)が違えば値は±2〜3割変わるため、資料ごとに数値が異なるのは普通のことです。
Q2. 表の値と機器メーカーの指定トルクが違う。どちらに従う?
A. 必ずメーカー指定値に従ってください。本ページの表は一般式による目安値で、座面の材質・潤滑・ガスケットの有無・繰返し荷重などの実条件を反映していません。取扱説明書・図面・施工要領書にトルク指定がある場合はそれが最優先です。指定がない場合の出発点として本表を使います。
Q3. 潤滑剤(オイル・モリブデングリス)を塗ると締付けトルクはどうなる?
A. 同じトルクでも軸力が大きく上がるため、表の値のまま締めると締めすぎ(ボルト降伏・破断)の危険があります。潤滑によりトルク係数Kは0.2程度から0.11〜0.15程度まで下がることが知られており、トルクを2〜3割程度下げるのが一般的な目安です。潤滑条件が管理された箇所では、その条件でのK値に基づく指定トルクに従ってください。
Q4. 強度区分がわからないボルトはどのトルクで締める?
A. 頭部の刻印を確認してください(8.8、10.9などの数字刻印)。刻印がなく強度区分が特定できない市販の並ボルトは、強度区分4.6〜4.8相当として扱うのが安全側です。8.8用のトルクで4.6のボルトを締めると軸力が耐力を超えて破断・へたりの原因になります。
Q5. 高力ボルト(F10T)もこの表で締めていい?
A. いけません。建築鉄骨の高力ボルト摩擦接合は、設計ボルト張力を導入するための専用の施工法(トルシア形の破断確認・ナット回転法・トルクコントロール法のキャリブレーション)が施工規準で定められており、本ページのような一般の目安表で代用することはできません。詳細は高力ボルトのページと施工規準を参照してください。
Q6. トルクレンチはどの範囲のものを選ぶ?
A. 設定したいトルクがレンチの測定範囲の20〜80%程度に収まるものを選ぶのが一般的です(範囲の下限・上限付近は精度が落ちるため)。例えばM10(8.8)の約50N・mなら、10〜60N・m級よりも20〜100N・m級の中央付近で使うほうが安定します。校正されたトルクレンチを使い、カチッと1回で止めるのが基本です。
Q7. 同じM10でも細目ねじだとトルクは変わる?
A. 変わります。細目ねじは並目より応力断面積が大きく(M10並目58.0mm²に対し細目P1.25は61.2mm²)、同じ軸力設定なら数%高いトルクになります。本ページの表は並目ねじの値です。細目はJIS B 1082の応力断面積で計算し直すか、メーカー資料の細目用の表を使ってください。
関連する早見表
- ボルト強度区分 — 4.6〜12.9の引張強さ・耐力(トルク計算の元になる値)
- スパナ・レンチ — ボルト径と工具対辺の対応
- ネジ径 M1〜M48 — 並目・細目ピッチと基準寸法
- 高力ボルト — F10T摩擦接合(本表の対象外)
- 六角レンチ対辺 — 六角穴付きボルトの工具サイズ
出典・参考
- JIS B 1083 — ねじの締付け通則(締付け方式・トルク係数の考え方)
- JIS B 1051 — 炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質(強度区分と耐力)
- JIS B 1082 — ねじの有効断面積(応力断面積As)
※ 本表はT=K×F×d(K=0.2、軸力=耐力の70%、並目ねじ)による計算値であり、特定の規格が定めた規定値ではありません。トルク係数・軸力設定の異なる資料とは値が一致しません。実作業では機器メーカー・図面の指定トルクを最優先し、指定がない場合も座面条件・潤滑の有無を考慮して調整してください。本表に基づく作業の結果について当サイトは責任を負いません。
最終更新: 2026-07-28