スペック早見表

幾何公差記号 早見表|JIS B 0021 記号一覧と読み方

機械図面で使う幾何公差の特性記号は、JIS B 0021で形状公差・姿勢公差・位置公差・振れ公差の4分類・全14種が規定されています。本ページでは各記号の意味・データム要否・典型用途を一覧化し、公差記入枠の読み方・データムの基礎・補助記号(最大実体公差方式Ⓜ等)まで、図面の読み書きに必要な知識をまとめました。

📌 即答: 幾何公差は4分類・14種

分類種類数公差の名称データム
形状公差6種真直度・平面度・真円度・円筒度・線の輪郭度・面の輪郭度不要
姿勢公差3種平行度・直角度・傾斜度必要
位置公差3種位置度・同軸度(同心度)・対称度原則必要
振れ公差2種円周振れ・全振れ必要

※ 線・面の輪郭度は、データムを付けて姿勢・位置の規制として使うこともできます。「単独形体(データム不要)か、関連形体(データム必要)か」が分類の軸です。

このページについて

幾何公差は「寸法(大きさ)」ではなく「形・姿勢・位置・振れの狂い」を規制する公差です。本ページはJIS B 0021(製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式)に基づき、特性記号14種を網羅しています。ISO 1101と整合した体系のため、海外図面の読解にもそのまま使えます。

「この記号はどういう意味?」「データムは要るのか?」「公差記入枠のφやⓂは何?」といった、図面を読む側・描く側の双方で頻発する疑問に即答できる構成にしました。

幾何公差記号 一覧(全14種)

記号はUnicode文字で表示しています。環境によって表示されない場合は、記号の下の形の説明を参照してください。

よく使う:
記号公差の名称分類データム意味・典型用途

横一本線
真直度
Straightness
形状公差不要線・軸線がどれだけ真っ直ぐかを規制。シャフト軸線の曲がり、細長い部品の反り、案内面の稜線に指示

平行四辺形
平面度
Flatness
形状公差不要面全体の平らさを規制。取付座面・シール面・定盤面など、密着や漏れ防止が必要な面に指示

真円度
Roundness
形状公差不要円形断面の真円からの狂いを断面ごとに規制。軸・穴の断面形状。回転部品の基本特性

円+斜め2本線
円筒度
Cylindricity
形状公差不要円筒面全体を2つの同軸円筒の間に規制(真円度+母線の真直度成分を含む)。ピストン・精密シャフト・シリンダ内面

円弧
線の輪郭度
Profile of a line
形状公差
(データム付きは姿勢・位置)
不要
(付ける場合あり)
理論的に正確な曲線に対する線の輪郭の狂い。カム曲線・成形品の断面形状に指示

弦で閉じた半円
面の輪郭度
Profile of a surface
形状公差
(データム付きは姿勢・位置)
不要
(付ける場合あり)
理論的に正確な曲面に対する面の狂い。金型曲面・意匠面・翼形状に指示

平行な2本の斜線
平行度
Parallelism
姿勢公差必要データム(基準の面・軸)に対して平行であるべき線・面の傾きを規制。ガイドレール・平行座面

逆T字
直角度
Perpendicularity
姿勢公差必要データムに対して90°であるべき線・面の傾きを規制。取付面に対する軸・壁面の直角

角の記号
傾斜度
Angularity
姿勢公差必要データムに対して理論的に正確な角度(90°以外)であるべき線・面の傾きを規制。テーパ面・斜め穴

円+十字線
位置度
Position
位置公差原則必要理論的に正確な寸法(TED)で定めた位置からのずれを規制。穴位置の指示の代表格。φ付きで円筒公差域

二重円
同軸度・同心度
Coaxiality / Concentricity
位置公差必要データム軸直線と同一直線上にあるべき軸線のずれ(同心度は中心点)を規制。段付き軸・軸受部

3本の横線(中央が長い)
対称度
Symmetry
位置公差必要データム中心平面に対して対称であるべき形体のずれを規制。キー溝・スリットの中心平面

斜め上向き矢印1本
円周振れ
Circular run-out
振れ公差必要データム軸直線の回りに1回転させたときの各測定位置での振れ(半径方向・軸方向)を規制。回転軸・プーリ

斜め上向き矢印2本
全振れ
Total run-out
振れ公差必要回転させながら測定子を移動させ、面全体の振れを一括規制。円周振れより厳しい。高速回転体の円筒面・端面

公差記入枠の読み方

幾何公差は長方形の枠(公差記入枠)を区画に分けて指示します。左から ①公差の種類の記号 ②公差値 ③データム文字(必要な場合・優先順) の順です。公差値の前にφが付けば公差域は円筒(または円)の内部、付かなければ平行2平面(2直線)の間を意味します。

記入例(枠内の並び)読み方
⏥ | 0.1この面は0.1mm離れた2つの平行な平面の間になければならない(平面度・データム不要)
⊥ | 0.05 | Aデータム平面Aに垂直な、0.05mm離れた2つの平行平面の間になければならない(直角度)
⌖ | φ0.2 | A B Cデータム系A・B・Cに関して理論的に正確な位置を軸とする、直径0.2mmの円筒の中になければならない(位置度)
◎ | φ0.03 | A軸線はデータム軸直線Aと同軸の直径0.03mmの円筒の中になければならない(同軸度)
↗ | 0.05 | Aデータム軸直線Aの回りに1回転させたとき、各測定位置での振れが0.05mm以下(円周振れ)
⌖ | φ0.2Ⓜ | A位置度φ0.2に最大実体公差方式を適用。形体寸法が最大実体状態から離れた分だけ公差が増える

公差記入枠から出た指示線の矢が「面や線そのもの」に当たれば表面の規制、「寸法線の延長上」に当たれば軸線・中心平面の規制です。同じ記号でも矢の当て方で意味が変わる点に注意してください。

データムの基礎

データムは、姿勢・位置・振れの公差を規制するための基準となる、理論的に正確な点・直線・平面です。部品側の基準となる形体(データム形体)に、正方形の枠で囲んだ英大文字(A・B・C…)とデータム三角記号を付けて指示します。

  • データム系(三平面データム系): 互いに直角な3つのデータム平面で部品の位置を完全に拘束します。公差記入枠の左から第1次→第2次→第3次の優先順位で、部品をどの面から順に突き当てて測るかを表します。
  • 優先順位で結果が変わる: 「A B C」と「B A C」では測定の段取りが異なり、同じ部品でも合否が変わり得ます。組立時に最初に接触する面を第1次データムに取るのが基本です。
  • 共通データム: 「A-B」のようにハイフンで結ぶと、2つの形体(例: 両端の軸受部)で1つのデータムを構成します。両持ちシャフトの振れ指示の定番です。

補助記号の概要

記号名称意味
最大実体公差方式形体が最大実体状態(軸は最大径・穴は最小径)から離れた分だけ幾何公差を追加で許容。はめあい・組付け目的の穴位置などに使い、機能ゲージ検証と整合
最小実体公差方式最小実体状態を基準に公差を追加許容。最小肉厚の保証など、材料が減る側が問題になる場合に使用
突出公差域公差域を形体の外側(突出部)に設定。ねじ穴・植込みボルトの位置度で、相手部品の板厚範囲での干渉を防ぐ
包絡の条件寸法公差に付け、最大実体寸法の完全形状の包絡面を超えてはならないことを指示。寸法と形状を関連付ける
50 の四角枠囲み理論的に正確な寸法(TED)公差を持たない理論寸法。位置度・輪郭度・傾斜度の公差域の中心(理論位置・理論角度)を定義する
CZ共通公差域複数の形体を1つの共通の公差域で規制する指示

使い方・選び方のポイント

使用場面

機械図面の作成・読解、検査計画(測定の段取り決め)、加工工程の基準面設定に使います。特に位置度・直角度・平面度・振れは量産部品図面の頻出4項目です。

よくある間違い

  • データム忘れ: 平行度・直角度・傾斜度・位置公差・振れ公差はデータムがないと意味が定まりません。記入枠にデータム文字があるか必ず確認します。
  • 真円度と円筒度の混同: 断面ごとの規制(真円度)か、円筒面全体の規制(円筒度)かで測定方法もコストも変わります。
  • 位置度をTEDなしの普通寸法と併用: 位置の基準はTED(四角枠寸法)で与えるのが原則。±公差の寸法連鎖と混在させると解釈が曖昧になります。
  • 過剰指定: 幾何公差を厳しくするほど測定・加工コストが増えます。機能に効く狂いだけを規制します。

選び方のコツ

①単独の形体の形だけなら形状公差(データム不要) ②基準に対する傾きなら姿勢公差 ③基準に対する位置なら位置公差 ④回転体なら振れ公差、の順に検討します。データムは組立時に最初に当たる取付面・基準穴に取るのが基本です。

幾何公差の原理と背景

寸法公差(サイズ公差)だけでは部品の「形」は保証できません。例えば軸の直径をマイクロメータで2点測定すると、断面が真円でなくても一定幅の異形(等径ひずみ円)なら測定値はすべて公差内に収まってしまいます。また、板の厚さがどこを測っても公差内でも、板全体が反っていれば相手部品と密着しません。こうした「寸法では捕まえられない狂い」を規制するために幾何公差が生まれました。

現在のJIS B 0021はISO 1101と整合したGPS(製品の幾何特性仕様)体系の一部で、記号・公差域の定義・データムの扱いが国際的に共通化されています。図面の解釈が作り手・測り手・国によって変わらない「一義性」の確保が体系の目的であり、記号14種と公差記入枠の書式はその共通言語です。

運用上の土台になるのが独立の原則(JIS B 0024)です。寸法公差と幾何公差は、特に指示がない限り互いに無関係に適用されます。寸法公差で形状も一緒に拘束したい場合は包絡の条件Ⓔを、寸法の実体状態に応じて幾何公差を緩めたい場合は最大実体公差方式Ⓜを明示的に指示する、というのが現行体系の考え方です。

よくある質問

Q1. 幾何公差と寸法公差の違いは?

A. 寸法公差は長さや直径といった「大きさ」の許容範囲を、幾何公差は真っ直ぐさ・平らさ・傾き・位置といった「形と位置の狂い」の許容範囲を規制します。JIS B 0024(独立の原則)により、特に指示がない限り両者は独立に適用されます。寸法が公差内でも形が狂っていると機能しない部品には、幾何公差の指示が必要です。

Q2. データムが必要な幾何公差と不要な幾何公差は?

A. 形状公差(真直度・平面度・真円度・円筒度)はデータム不要です。姿勢公差(平行度・直角度・傾斜度)、振れ公差(円周振れ・全振れ)、同軸度・同心度・対称度はデータムが必要です。位置度は原則データムを付けます。輪郭度はデータムなし(形状公差)でもデータム付き(姿勢・位置の規制)でも使えます。

Q3. 真円度と円筒度の違いは?

A. 真円度は円筒の「各断面(円)」ごとの真円からの狂いを規制し、断面ごとに独立して評価します。円筒度は「円筒面全体」を2つの同軸円筒の間に収める規制で、真円度に加えて母線の真直度や径の一様さの成分も含む、より厳しい指定です。

Q4. 同軸度と同心度の違いは?

A. 記号は同じ◎(二重円)ですが対象が異なります。同軸度はデータム軸直線に対する「軸線(直線)」のずれを、同心度はデータム点に対する「円の中心(点)」のずれを規制します。段付き軸のように長さを持つ形体には同軸度、断面内の中心位置だけを規制する場合は同心度を使います。

Q5. 円周振れと全振れの違いは?

A. 円周振れはデータム軸直線の回りに部品を1回転させたときの「各測定位置ごと」の振れを規制します。全振れは回転させながら測定子を軸方向に移動させ、「面全体」の振れを一括で規制します。全振れは真円度・真直度・同軸度などの狂いをまとめて含むため、円周振れより厳しい指定です。

Q6. Ⓜ(最大実体公差方式)とは何ですか?

A. 形体の寸法が最大実体状態(軸なら最大径・穴なら最小径)から離れた分だけ、幾何公差の許容値を追加で認める方式です。ボルト穴の位置度のように「相手と組み付けばよい」機能の形体で、機能を損なわずに公差を実質的に広げられ、機能ゲージによる検証とも整合します。公差値やデータム文字の後にⓂを付けて指示します。

Q7. 位置度に付く四角の枠で囲んだ寸法は何ですか?

A. 理論的に正確な寸法(TED)です。公差域の中心となる「理論上の正しい位置・角度」を定義する寸法で、それ自体は公差を持ちません。位置のばらつきはすべて位置度公差の側で規制されます。普通寸法(±公差)の連鎖で穴位置を指定すると公差の累積が起こるため、位置度ではTEDとの併用が原則です。

関連する早見表

関連規格・出典

  • JIS B 0021「製品の幾何特性仕様(GPS)−幾何公差表示方式−形状,姿勢,位置及び振れの公差表示方式」
  • JIS B 0022「幾何公差のためのデータム」
  • JIS B 0024「製品の幾何特性仕様(GPS)−基本原則」(独立の原則)
  • ISO 1101「Geometrical product specifications (GPS) — Geometrical tolerancing」(参考)

最終更新: 2026-07-04