熱膨張 計算(伸び量)・計算ツール
元長×温度差×線膨張係数で伸び量を計算します。配管・機械・橋梁・サッシの温度差設計に。
伸び量 ΔL
計算式: ΔL = L × α × ΔT (αは下表の線膨張係数)
計算式と単位
ΔL = L × α × ΔT
- ΔL: 伸び量(mm)
- L: 元の長さ(mm)
- α: 線膨張係数(1/K = 1/℃)。表は ×10⁻⁶ 単位
- ΔT: 温度差(K = ℃)。差分計算ではKと℃は同じ値
例: 炭素鋼配管 10m(L=10000mm)が室温20℃から70℃まで上昇(ΔT=50K)した場合の伸び量
ΔL = 10000 × 11.7×10⁻⁶ × 50 = 5.85 mm
代表的な線膨張係数 α (×10⁻⁶/K)
| 材質 | α (×10⁻⁶/K) |
|---|---|
| 炭素鋼(SS400) | 11.7 |
| ステンレスSUS304 | 17.3 |
| ステンレスSUS316 | 16.0 |
| ステンレスSUS430 | 10.4 |
| 鋳鉄(FC) | 10.5 |
| アルミ(A1050) | 23.1 |
| アルミ合金(A5052) | 23.8 |
| 銅(C1100) | 16.5 |
| 真鍮(黄銅) | 19.0 |
| 青銅 | 17.5 |
| チタン(TP270) | 8.6 |
| インバー(36Ni) | 1.2 |
| 石英ガラス | 0.5 |
| ソーダ石灰ガラス | 9.0 |
| ホウケイ酸ガラス(パイレックス) | 3.3 |
| コンクリート | 10.0 |
| 木材(繊維方向) | 5.0 |
| 木材(直交方向) | 35.0 |
| PVC(硬質塩ビ) | 70 |
| ポリエチレン(LDPE・低密度) | 200 |
| ポリエチレン(HDPE・高密度) | 120 |
| ポリプロピレン(PP) | 110 |
| ナイロン(PA6) | 80 |
| ポリカーボネート(PC) | 65 |
| ABS | 90 |
| アクリル(PMMA) | 70 |
| GFRP(ガラス繊維・繊維方向) | 8 |
| CFRP(炭素繊維・繊維方向) | -0.5 |
※常温付近(20℃前後)の代表値。高温域・極低温では非線形になる場合があります。各材料の正確な値は メーカー物性表・JIS規格 をご確認ください。
温度差別 伸び量早見(L=10m 基準)
配管・橋梁・レール等の長尺物で参考に。
| 材料 | α | ΔT=10℃ | ΔT=30℃ | ΔT=50℃ | ΔT=80℃ | ΔT=100℃ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 炭素鋼 | 11.7 | 1.17 mm | 3.51 mm | 5.85 mm | 9.36 mm | 11.70 mm |
| SUS304 | 17.3 | 1.73 mm | 5.19 mm | 8.65 mm | 13.84 mm | 17.30 mm |
| SUS316 | 16.0 | 1.60 mm | 4.80 mm | 8.00 mm | 12.80 mm | 16.00 mm |
| アルミ | 23.1 | 2.31 mm | 6.93 mm | 11.55 mm | 18.48 mm | 23.10 mm |
| 銅 | 16.5 | 1.65 mm | 4.95 mm | 8.25 mm | 13.20 mm | 16.50 mm |
| 真鍮 | 19.0 | 1.90 mm | 5.70 mm | 9.50 mm | 15.20 mm | 19.00 mm |
| チタン | 8.6 | 0.86 mm | 2.58 mm | 4.30 mm | 6.88 mm | 8.60 mm |
| インバー | 1.2 | 0.12 mm | 0.36 mm | 0.60 mm | 0.96 mm | 1.20 mm |
| コンクリート | 10.0 | 1.00 mm | 3.00 mm | 5.00 mm | 8.00 mm | 10.00 mm |
| PVC | 70.0 | 7.00 mm | 21.00 mm | 35.00 mm | 56.00 mm | 70.00 mm |
| ポリエチレン(LDPE) | 200.0 | 20.00 mm | 60.00 mm | 100.00 mm | 160.00 mm | 200.00 mm |
逆引き: 伸びを1mm以内に抑えられる長さ(ΔT=50Kの場合)
許容できる伸び量から部材の最大長さを逆算する目安です。L(最大) = 許容ΔL ÷ (α × ΔT) で、下表はΔT=50K・許容1mmの場合。許容が2mmなら長さは2倍にできます。
| 材料 | α (×10⁻⁶/K) | 最大長さの目安 |
|---|---|---|
| 石英ガラス | 0.5 | 約40 m |
| インバー | 1.2 | 約16.7 m |
| チタン | 8.6 | 約2.3 m |
| コンクリート | 10.0 | 約2.0 m |
| 炭素鋼 | 11.7 | 約1.7 m |
| SUS316 | 16.0 | 約1.25 m |
| 銅 | 16.5 | 約1.2 m |
| SUS304 | 17.3 | 約1.16 m |
| アルミ | 23.1 | 約0.87 m |
| PVC(硬質塩ビ) | 70.0 | 約0.29 m |
| ポリエチレン(LDPE) | 200.0 | 約0.10 m |
異種材料の組合せ設計のポイント
- 鉄筋コンクリート: 鉄(α=11.7)とコンクリート(α=10)が近く相性◎。RC構造の温度ひび割れが少ない理由
- アルミサッシ + RC躯体: αが約2倍違うため、取付クリアランス(両側合計5〜10mm程度)が必要
- ステンレス + 鋼: SUS304(17.3)とSS400(11.7)の差により、溶接時の熱応力・反り対策必要
- 橋梁の伸縮装置: 50m長の鋼桁で温度差40℃時 → ΔL=23.4mm。伸縮継手で吸収
- 配管のループ・スパン: 長距離配管はループ(オフセット)で熱伸びを吸収
- レール: ロングレール工法では温度応力を許容するためレール本体を予め引張り(締結)
実務でよくある取り違え・単位の罠
最も多いのが表記のスケール違いです。線膨張係数は資料によって「11.7×10⁻⁶/K」「1.17×10⁻⁵/℃」「11.7 ppm/K」と書き方が分かれますが、いずれも同じ値です。指数を読み違えて ×10⁻⁵ 表記の値をそのまま ×10⁻⁶ の表に混ぜると、伸び量を10倍(または1/10)に誤ります。電子部品・半導体分野では CTE(ppm/K)表記が標準で、これは ×10⁻⁶/K と数値がそのまま一致します。
| 表記 | 炭素鋼の例 | 主に見かける資料 |
|---|---|---|
| ×10⁻⁶/K | 11.7×10⁻⁶/K | 本表・JIS物性表 |
| ×10⁻⁵/℃ | 1.17×10⁻⁵/℃ | 便覧・古い技術資料 |
| ppm/K(CTE) | 11.7 ppm/K | 電子部品・半導体データシート |
| μm/(m·K) | 11.7 μm/(m·K) | 「1m・1Kあたり何μm」を直読できる表記 |
次に多いのがΔTの取り方です。設計で見るべきは「施工(組立)時の温度と使用中の最高・最低温度との差」で、膨張側だけでなく収縮側も必ず確認します。例えば夏の30℃の日に施工したPVC配管10mは、冬に0℃まで下がるとΔT=30Kで約21mm縮み、伸び代しか見ていないと接着継手の抜けやサドル金具のずれとして現れます。逆に鋼管の温水(80℃)配管は20℃施工ならΔT=60Kで10mあたり約7mm伸びるため、固定支持の間に可動支持を入れて逃がします。
「加熱すると穴は縮む」という思い込みも定番の誤りです。穴・すきま・内径も母材と同じ割合で広がります(焼きばめはこの性質の利用)。また、油や水など液体の資料に載っているのは体膨張係数βで、線膨張係数αと混同すると約3倍の誤差になります(等方性固体ではβ≈3α)。
熱膨張が起こる仕組み
温度が上がると物質を構成する原子の熱振動が大きくなり、原子どうしの平均間隔が広がるため、固体は膨張します。膨張のしやすさは材質ごとの線膨張係数で表され、同じ金属でもアルミは鉄の約2倍膨張しやすい性質があります。
伸びは「元の長さ×線膨張係数×温度差」で求められます。長尺の部材や大きな温度差ほど伸縮量が大きくなるため、橋・鉄道のレール・配管では継手や隙間で伸縮を逃がさないと、座屈や破損につながります。
異なる材料を組み合わせると、膨張差によって応力やそり(バイメタルの原理)が生じます。精密な機械や測定では、わずかな温度差でも寸法がずれるため、基準温度を定めて管理します。
このツールの使いどころと入力時の注意
典型的な使い方は、蒸気・温水配管の熱伸び計算(伸縮継手やループの要否判断)、屋外の長尺部材(レール・手すり・笠木・折板屋根)の逃げ寸法の確認、焼きばめ・冷やしばめの締め代の見積りです。入力はLがmm、ΔTが℃(=K)で、αは材質を選べば自動で入ります。最も多い入力ミスは10m=10000mmの換算漏れで、結果の桁が合わないときはまずLの単位を疑ってください。
樹脂部品の寸法検査の補正にも使えます。例えばPVC(α=70)の1m部材は、20℃の図面寸法どおりに作られていても、5℃の倉庫では約1mm(1000×70×10⁻⁶×15=1.05mm)縮んで測定されます。金属の感覚のまま「不良」と判定すると誤判定になります。逆に精密測定では、鋼製ゲージでも20℃(JISの標準温度)から外れた環境では補正が必要です。
よくある質問
Q. 熱膨張の計算式は?
A. ΔL = L × α × ΔT。L=元の長さ(mm)、α=線膨張係数(/K)、ΔT=温度差(K または ℃)。例: 鉄10m(L=10000mm)が30℃→80℃(ΔT=50K)で伸びる量は10000×11.7×10⁻⁶×50=5.85mm。
Q. 鉄とアルミでどれくらい違う?
A. アルミ(α=23.1)は鉄(α=11.7)の約2倍膨張します。鉄筋コンクリート(α=10〜12)はほぼ同等で相性◎、アルミサッシは熱膨張差を考慮した取付クリアランスが必要。
Q. インバーが特殊な理由は?
A. 36%Ni-Fe合金で線膨張係数α=1.2×10⁻⁶/Kと極小。普通鋼の約1/10。精密測定機・標準尺・レーザー光学系の支持材料として使われます。
Q. 温度差(ΔT)はK?℃?
A. 温度「差」はKと℃で同じ値(°C/K単位は同じ刻み)。ΔT=50℃=50K。絶対温度では異なるが差分計算では区別不要。
Q. 穴やパイプの内径も温度で広がる?
A. 広がります。穴・すきま・内径も母材と同じ割合で膨張するため、加熱すると穴径は大きくなります。焼きばめはこの性質の利用で、炭素鋼のφ50穴を100K加熱すると内径は約0.06mm(50×11.7×10⁻⁶×100)拡大します。「穴は縮む」は定番の誤解です。
Q. 体膨張係数との違いは?
A. 線膨張係数αは長さ、体膨張係数βは体積の変化率で、等方性の固体ではβ≈3α。油や水など液体はβで公表されることが多く、αと取り違えると約3倍の誤差になります。タンクの油面上昇など体積の計算にはβを使います。
関連する早見表
出典・参考
- JIS Z 8000「量及び単位」
- JIS G 4303・G 4304・G 4305(ステンレス鋼物性)
- 機械工学便覧(日本機械学会)
- 各材料メーカー(JFEスチール・神戸製鋼・住友軽金属・三菱マテリアル等)公開技術資料
- NIST Standard Reference Materials(米国国立標準技術研究所)
※線膨張係数は温度・組成・熱処理状態で変動します。重要設計では使用する材料の実物性値をメーカー証明書・実測で確認してください。
※本表の線膨張係数は JIS G 4304・G 4305(ステンレス鋼の物性参考値)および日本機械学会「機械工学便覧」の公表値と照合済み(2026-07-19)。
最終更新: 2026-07-19