スペック早見表

アンカーボルト規格 早見表|JIS B 1220 基礎ボルトの種類と寸法

建築の鉄骨柱脚や基礎に使われるアンカーボルト(JIS B 1220 構造用両ねじアンカーボルトセット)のリファレンス。種類記号 ABR400/ABR490/ABM400/ABM490 の機械的性質(降伏点・引張強さ)、M12〜M48並目ねじのピッチ・有効断面積、定着長さの考え方、あと施工アンカーの種類と実務の注意点をまとめました。

📌 即答: JIS B 1220 アンカーボルト(炭素鋼)は4種類

種類記号ねじの加工法引張強さ (N/mm²)ひとこと
ABR400転造ねじ(並目)400〜510露出柱脚で広く使われる標準タイプ(M16〜M48)
ABR490転造ねじ(並目)490〜610転造の高強度タイプ(M16〜M48)
ABM400切削ねじ(細目)400〜510削り出しの細目ねじ(M24〜M48)
ABM490切削ねじ(細目)490〜610切削の高強度タイプ。M100までの大径に対応

R=転造(Rolled)、M=切削(Machined)のねじ加工法、数字=引張強さの下限値(N/mm²)を表します。図面に「ABR400 M24」などと書かれていればJIS B 1220のアンカーボルトセットの指定です。2015年版で転造(旧JIS B 1220:2010)と切削(旧JIS B 1221:2010)の規格が統合され、2023年の追補ではステンレス鋼製のABR520SUS・ABM520SUS(SUS304A、引張強さ520 N/mm²以上)が追加されています。

このページについて

アンカーボルトは、鉄骨柱・機器架台などをコンクリート基礎に緊結するためのボルトです。本ページではJIS B 1220「構造用両ねじアンカーボルトセット」で公表されている炭素鋼4種類の機械的性質、およびメートル並目ねじM12〜M48の基本諸元(ピッチ・有効断面積)を掲載しています。

埋込み長さ(定着長さ)やあと施工アンカーの穿孔径・埋込み深さは構造計算・メーカーカタログで決まる値のため、本ページには具体値を載せていません。考え方の整理と規格値の確認にお使いください。

JIS B 1220 の種類と機械的性質

炭素鋼4種類の機械的性質。降伏点・引張強さは、ボルトの材料に指定される建築構造用圧延棒鋼SNR400B/SNR490B(JIS G 3138)の径40mm以下の規定値です(径40mm超は降伏点の規定値が異なります)。材料には降伏比の上限(ABRは80%以下、ABMは75%以下)も規定され、地震時の伸び能力を確保しています。正式にはJIS本文を参照してください。

種類記号ねじの加工法降伏点又は耐力 (N/mm²)引張強さ (N/mm²)
ABR400転造(並目ねじ)235〜355400〜510
ABR490転造(並目ねじ)325〜445490〜610
ABM400切削(細目ねじ)235〜355400〜510
ABM490切削(細目ねじ)325〜445490〜610

※ 一般ボルトの強度区分(4.6、8.8など)とは別体系です。混同しないよう注意してください(ボルト強度区分早見表参照)。

ねじの呼び系列 M12〜M48(並目ねじの基本諸元)

メートル並目ねじの基本データ(ピッチ: JIS B 0205、有効断面積: JIS B 1082)。JIS B 1220の呼び範囲はABR400/ABR490がM16〜M48、ABM400がM24〜M48、ABM490がM24〜M100です。ABM400/ABM490は細目ねじのため、下表(並目)のピッチ・有効断面積はそのまま適用できません。M12はJIS B 1220の範囲外ですが、機器据付け用アンカーボルト等で使われるため参考として掲載しています。下の入力欄で行を絞り込めます(例: M16)。

ねじの呼び呼び径 (mm)ピッチ 並目 (mm)ねじ部有効断面積 As (mm²)
M12121.7584.3
M16162157
M20202.5245
M24243353
M27273459
M30303.5561
M33333.5694
M36364817
M39394976
M42424.51121
M45454.51306
M484851473

※ 有効断面積 As はねじ部の引張耐力計算に用いる断面積です。ボルトの長さ・ねじ部長さ・セット構成(ナット・座金)は製品仕様・構造図の指定によります。

埋込み長さ(定着長さ)の一般原則

先付けアンカーボルトの引抜きに対する強さは、①ボルト自体の強度、②コンクリートへの定着(付着・支圧)、③コンクリートのコーン状破壊、のうち最も弱い箇所で決まります。両ねじアンカーボルトでは、下端にナットや定着板を取り付けて機械的に定着するのが一般的です。

  • 定着長さは構造計算で決まる — コンクリート強度・ボルト径・引抜き力・縁あき距離などの条件により必要長さが変わるため、一律の早見値はありません。
  • 露出柱脚の告示規定 — 建築基準法の告示(平12建告第1456号)では、露出形式の柱脚についてアンカーボルトの基礎に対する定着長さを径の20倍以上とすることなどが定められています。
  • 縁あき・へりあきに注意 — 基礎の縁に近い位置ではコーン状破壊が生じやすく、耐力が大きく低下します。

※ 実際の埋込み長さ・定着方法は必ず構造図・構造計算書の指定に従ってください。本ページの表から定着長さを決めることはできません。

あと施工アンカーの種類

硬化した既存コンクリートに後から打つアンカーをあと施工アンカーと呼びます。大きく「金属拡張系」と「接着系」に分かれます。

金属拡張アンカー(金属系)

  • 芯棒打込み式 — 本体を孔に挿入し、芯棒をハンマーで打ち込むと先端が拡張して固着。打込み完了が目視で確認しやすい。
  • 本体打込み式 — 内部のコーンに向かって本体を打ち込み、先端を拡張させて固着。
  • ウェッジ式(締付け方式) — ナットを締め付けるとくさび(ウェッジ)が開いて孔壁に食い込み固着。

接着系アンカー

  • カプセル方式 — 樹脂と硬化剤の入ったカプセルを孔に入れ、ボルトの回転・打撃で撹拌して硬化させる。
  • 注入方式 — カートリッジ等から樹脂を孔に注入し、ボルトを挿入して硬化させる。低温時の硬化時間管理などが必要。

※ 重要: あと施工アンカーの穿孔径・穿孔深さ・有効埋込み深さ・許容荷重は製品(型番)ごとに異なるため、本ページには掲載していません。必ずメーカーカタログ・技術資料の値で設計・施工してください。

実務の注意点

先付けとあと施工の使い分け

新築の鉄骨柱脚など構造体の緊結には、コンクリート打設前に設置する先付けアンカーボルト(JIS B 1220等)を使います。あと施工アンカーは既存コンクリートへの後付け固定(設備機器・架台・耐震補強など)に用いるもので、新築建物の構造耐力上主要な部分への使用は原則として認められていません。耐震改修などでの構造利用は関連指針に基づいて設計されます。

二重ナット(ダブルナット)

振動・繰返し荷重を受ける箇所では、ナットの緩み止めとして二重ナットがよく指定されます。2個のナットを互いに締め付け合わせて(ロッキング)初めて効果が出るため、単に2個重ねただけでは緩み止めになりません。また、締付け後にボルトのねじ山がナットから十分に(一般に3山程度以上が目安)出ていることを確認します。

台直しの禁止事項(一般論)

コンクリート打設後にアンカーボルトの位置ずれが見つかった際、ボルトを曲げて修正する「台直し」は、無理な常温曲げや加熱により強度・じん性を損なうおそれがあるため原則として避けるべき行為です。位置保持にはテンプレート(型板)を用い、打設中の移動を防ぐのが基本です。ずれが生じた場合は自己判断で修正せず、設計者・工事監理者の指示を受けてください。

ねじ部の養生

コンクリート打設時は、露出するねじ部にモルタルが付着したり打撃で山がつぶれたりしないよう、キャップやテープで養生します。ねじ山の損傷はナットの締付け不良に直結します。

使い方・選び方のポイント

使用場面

鉄骨柱脚のアンカーボルト選定・発注、構造図の種類記号(ABR400など)の読み取り、ねじ諸元(ピッチ・有効断面積)の確認、あと施工アンカーの方式選定の下調べに使います。

よくある間違い

①JIS B 1220の種類記号と一般ボルトの強度区分(4.6・8.8等)の混同 ②あと施工アンカーの許容荷重を製品カタログで確認せず別製品の値を流用 ③定着長さを慣例値で自己判断 ④位置ずれ時の無断の台直し——はいずれも重大な事故・不適合につながります。

選び方のコツ

①構造図・特記仕様書の指定(種類記号・呼び・長さ・セット構成)を最優先 ②新設の構造固定は先付け、既存躯体への後付けはあと施工 ③迷ったら構造設計者・工事監理者に確認、の順で判断します。

なぜ建築用アンカーボルトに専用のJIS規格があるのか

アンカーボルトは地震時に柱脚へ集中する引張力を受け持つ部材です。過去の大地震では柱脚部のアンカーボルト破断による被害が報告され、単に「強い」だけでなく降伏後に伸びてエネルギーを吸収できる(伸び能力のある)アンカーボルトの必要性が認識されました。JIS B 1220は建築構造用の鋼材をベースに、降伏点と引張強さの範囲を管理することで、地震時の塑性変形を設計で見込めるアンカーボルトを規定した規格です。

ABR(転造ねじ)は、素材にダイスを押し付けてねじ山を塑性変形で盛り上げる加工です。金属の繊維状組織が切断されず、加工硬化によってねじ部の強度が母材より高くなります。転造両ねじアンカーボルトは軸部の断面積とねじ部の有効断面積が近く、ねじ部が加工硬化で強いため軸部の降伏が先行し、ボルト全長で伸びてエネルギーを吸収しやすい構造になります。一方ABM(切削ねじ)は丸鋼からねじ山を削り出す加工で、M100までの大径に対応できる反面、そのままでは断面が最も小さいねじ部に変形が集中しやすくなります。このためJIS B 1220のABM400/ABM490には、並目より有効断面積が大きい細目ねじの採用と降伏比75%以下の材料規定によって、伸び能力を確保する仕組みが定められています。

あと施工アンカーの原理はこれと異なり、金属拡張系は拡張部が孔壁に食い込む摩擦・支圧で、接着系は樹脂の付着力で荷重を伝えます。いずれもコンクリート側のコーン状破壊が耐力を支配することが多く、縁あき距離・アンカー間隔・母材コンクリートの強度が性能に大きく影響します。ボルト単体の強度だけでなく「コンクリートごと抜ける」壊れ方を想定するのが、アンカー設計に共通する考え方です。

よくある質問

Q1. ABRとABMの違いは?

A. どちらもJIS B 1220に規定される構造用両ねじアンカーボルトで、ABRは転造ねじ(ねじ山を塑性加工で盛り上げて成形)、ABMは切削ねじ(ねじ山を削り出して加工)です。ねじはABRが並目、ABM400/ABM490は細目です。末尾の数字(400/490)は引張強さの下限値(N/mm²)を表し、この区分は両者共通です。

Q2. ABR400の「400」は何の数字?

A. 引張強さの下限値400 N/mm²を表します。同様にABR490・ABM490の「490」は引張強さ490〜610 N/mm²の区分を意味します。数字が大きいほど高強度ですが、どれを使うかは降伏点や伸び能力も含めて構造設計で決まります。

Q3. アンカーボルトの埋込み長さ(定着長さ)はどれくらい必要?

A. 必要な定着長さは、コンクリート強度・ボルト径・作用する引抜き力などから構造計算で決まるため一律の値はありません。露出柱脚については建築基準法の告示(平12建告第1456号)で、アンカーボルトの基礎に対する定着長さを径の20倍以上とすることなどが定められています。実際の寸法は必ず構造図・構造計算書に従ってください。

Q4. 先付けアンカーボルトとあと施工アンカーはどう使い分ける?

A. 新築の鉄骨柱脚のように最初から位置が決まっている構造固定には、コンクリート打設前に設置する先付けアンカーボルト(JIS B 1220など)を使います。既存コンクリートへの後付け固定(設備機器・架台・耐震補強など)にはあと施工アンカー(金属拡張系・接着系)を使います。あと施工アンカーの許容荷重・穿孔径・埋込み深さは製品ごとに異なるため、必ずメーカーカタログの値で設計します。

Q5. ダブルナット(二重ナット)はなぜ必要?

A. 振動や繰返し荷重によるナットの緩みを防ぐためです。2個のナットを互いに締め付け合わせる(ロッキング)ことでねじ面の接触状態を変え、緩みにくくします。ただし正しい手順(下ナットの逆回し保持など)で施工しないと効果が出ないため、単に2個重ねただけでは緩み止めになりません。

Q6. アンカーボルトの「台直し」とは?やってもいい?

A. 位置がずれたアンカーボルトを曲げて所定位置に修正する作業を台直しと呼びます。無理な常温曲げや加熱による曲げ戻しは、ボルトの強度・じん性を低下させるおそれがあるため原則として避けるべき行為です。位置ずれが生じた場合は自己判断で修正せず、設計者・工事監理者に報告して指示を受けてください。

Q7. あと施工アンカーの穴径・埋込み深さはこのページで分かる?

A. 掲載していません。あと施工アンカーの穿孔径・穿孔深さ・有効埋込み深さ・許容荷重は製品(型番)ごとに異なり、メーカーカタログ・技術資料の値がそのまま設計値になります。本ページでは種類と選び方の考え方のみを解説しています。

Q8. JIS B 1178の基礎ボルトとJIS B 1220の違いは?

A. JIS B 1178は機械・設備の据付けなどに広く使われる基礎ボルト(L形・J形など先端を曲げた形状)の規格です。一方JIS B 1220は建築の鉄骨柱脚などを対象とした構造用両ねじアンカーボルトのセットを規定し、降伏点・引張強さといった構造材としての機械的性質が定められています。建築図面で「ABR」「ABM」と指定されていればJIS B 1220です。

関連する早見表

関連規格・出典

  • JIS B 1220「構造用両ねじアンカーボルトセット」 — 種類(ABR400/ABR490/ABM400/ABM490ほか)・機械的性質。2015年に旧JIS B 1220(転造)と旧JIS B 1221(切削)を統合
  • JIS B 0205「一般用メートルねじ」 — 並目ねじの基準寸法(ピッチ)
  • JIS B 1082「ねじの有効断面積」 — ねじ部有効断面積 As
  • JIS G 3138「建築構造用圧延棒鋼」 — アンカーボルト用素材鋼(SNR材)の機械的性質
  • 平12建告第1456号 — 鉄骨造柱脚(露出形式等)の構造方法の基準

最終更新: 2026-07-03