ヒューズ規格 早見表|管ヒューズ寸法・溶断特性・自動車用の色
電子機器の管ヒューズ(ガラス管・セラミック管)と自動車用ブレードヒューズのリファレンス。標準寸法(φ5.2×20mm/φ6.4×30mm)、IEC 60127の溶断特性(FF/F/M/T/TT)、「T2AL250V」といった表記の読み方、ISO 8820の色と定格(10A赤・15A青・20A黄など)、選定の基礎までを一覧化しました。
📌 即答: ヒューズ規格の要点
| 知りたいこと | 答え |
|---|---|
| ガラス管ヒューズの標準寸法 | 国内主流は φ5.2×20mm と φ6.4×30mm の2サイズ |
| F と T の意味 | F=速断形(すぐ切れる)/T=タイムラグ形(突入電流を許容) |
| T2AL250V の読み方 | タイムラグ形・定格2A・低遮断容量(L)・定格電圧250V |
| 自動車用の色(代表) | 5A橙・7.5A茶・10A赤・15A青・20A黄・30A緑(ISO 8820) |
| 交換の鉄則 | 同じ定格電流・同じ溶断特性・同じ寸法。上位定格への交換はNG |
このページについて
ヒューズは、過電流が流れたときに内部の可溶体(エレメント)が溶断して回路を遮断する保護部品です。本ページではIEC 60127(ミニチュアヒューズ)とISO 8820(自動車用ヒューズ)に基づき、溶断特性の5クラス・定格電流の標準系列・表記の読み方・遮断容量区分・自動車用ブレードヒューズの色と寸法を整理しています。
「切れたヒューズの代わりに何を買えばいいか」「T2AL250Vと書いてあるが意味が分からない」「車のヒューズは色で定格が分かるのか」といった、保守・修理・電装いじりの現場で頻発する疑問に即答できる構成です。
表1: 溶断特性の記号(IEC 60127)
記号はドイツ語の flink(速い)/träge(遅い)に由来します。同じ定格電流でも特性が違えば別物です。
| 記号 | 名称 | 特性 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| FF | 超速断形 | きわめて速く溶断 | 半導体・計測器の保護 |
| F | 速断形 | 過電流で速やかに溶断 | 一般の電子回路 |
| M | 中遅延形(中速形) | FとTの中間 | 汎用 |
| T | タイムラグ形(遅延形) | 突入電流では切れず、持続する過電流で溶断 | トランス・モーター・スイッチング電源など突入電流のある機器 |
| TT | 超遅延形 | より大きな突入電流を許容 | 突入電流が特に大きい回路 |
表2: 管ヒューズ表記の読み方と定格電流系列
IEC 60127系の管ヒューズは「特性記号 + 定格電流 + 遮断容量記号 + 定格電圧」の順で表記されます。例: T2AL250V。
| 位置 | 意味 | T2AL250Vの場合 |
|---|---|---|
| 特性記号 | 溶断特性(FF/F/M/T/TT) | T = タイムラグ形 |
| 定格電流 | 連続して流せる電流 | 2A |
| 遮断容量記号 | L=低遮断容量 / H=高遮断容量 | L = 低遮断容量 |
| 定格電圧 | 安全に遮断できる電圧の上限 | 250V |
遮断容量区分(IEC 60127-2)
| 記号 | 遮断容量 | 主な構造 |
|---|---|---|
| L(低遮断容量) | 定格電流の10倍 または 35A のいずれか大きい方 | 主にガラス管 |
| H(高遮断容量) | 1,500A | 主にセラミック管(消弧材入り) |
定格電流の標準系列(R10系列)
| 区分 | 標準系列 |
|---|---|
| mA帯 | 32 / 40 / 50 / 63 / 80 / 100 / 125 / 160 / 200 / 250 / 315 / 400 / 500 / 630 / 800 mA |
| A帯 | 1 / 1.25 / 1.6 / 2 / 2.5 / 3.15 / 4 / 5 / 6.3 / 8 / 10 A |
※ R10系列は1ステップ約1.25倍(101/10≒1.259)の標準数。「3.15A」という中途半端に見える値は√10(≒3.16)に対応する丸め値で、10倍ごとに同じ数字が循環するように決められています。
表3: ガラス管ヒューズの標準寸法
| 呼び寸法 | 外径×全長 | 備考 |
|---|---|---|
| φ5.2×20mm | 約5.2×20mm | 国内で最も一般的。電子機器・家電の内部ヒューズ |
| φ6.4×30mm | 約6.4×30mm | 国内の従来型サイズ。電源まわり・古めの機器に多い |
| φ5×20mm | 約5×20mm | IEC 60127系の国際標準サイズ。5.2×20mmとホルダーを共用できる場合が多いが、機器の指定寸法を確認 |
| φ6.3×32mm | 約6.35×31.8mm | インチ系(1/4×1-1/4インチ)。海外設計の機器に多い |
※ 交換時は寸法だけでなく、定格電流・溶断特性・定格電圧・遮断容量がすべて元のヒューズ(機器の指定)と一致するものを選びます。
表4: 自動車用ブレードヒューズの色と定格(ISO 8820)
色分けはミニ・低背(ロープロファイル)・レギュラーの各形状で共通です。上面の刻印数字と併せて確認できます。
| 定格電流 | 色 | 色(英語表記) |
|---|---|---|
| 1A | 黒 | Black |
| 2A | 灰 | Grey |
| 3A | 紫 | Violet |
| 4A | ピンク | Pink |
| 5A | 橙(タン) | Tan |
| 7.5A | 茶 | Brown |
| 10A | 赤 | Red |
| 15A | 青 | Blue |
| 20A | 黄 | Yellow |
| 25A | 透明(ナチュラル) | Natural |
| 30A | 緑 | Green |
※ 35A以上の大電流ヒューズは形状・シリーズによって色の割り当てが異なるため、本表では30Aまでを掲載しています。必ず刻印数字で確認してください。
ブレードヒューズの形状と寸法(参考値)
| 形状 | 幅×高さ×厚さ(約) | 備考 |
|---|---|---|
| ミニ | 約10.9×16.3×3.6mm | 現行車で広く採用 |
| 低背(ロープロファイル) | 約10.9×8.7×3.8mm | 近年の国産車に多い。ミニと端子は似るが高さが低く互換性なし |
| レギュラー(平型) | 約19.1×18.5×5.1mm | 従来型。旧年式車・大電流回路 |
※ 自動車用ブレードヒューズの定格電圧は多くが直流32Vです。AC100V回路には使用できません。形状間に互換性はないため、車両のヒューズボックスに合うものを選びます。
選定の基礎
- 定常電流を把握する — 保護したい回路に通常流れる電流を実測または計算で求めます。
- 余裕を持った定格を選ぶ — ヒューズは定格電流ちょうどでは切れませんが、定格近くで使い続けると周囲温度や経年で誤溶断しやすくなります。定常電流に対して余裕のある定格を標準系列から選び、必要な余裕量はデータシートの時間-電流特性とディレーティング(温度低減)曲線で確認します。「定格の◯倍」という一律の倍率則は特性・環境で変わるため、あくまで目安に留めます。
- 溶断特性を機器に合わせる — トランス・モーター・コンデンサ入力型電源など電源投入時に突入電流が流れる機器はT形/TT形。突入電流のI²t(電流2乗時間積)がヒューズの溶断I²tを下回ることが目安です。半導体保護など即応が必要ならF形/FF形。
- 定格電圧 ≧ 回路電圧 — 定格電圧は「安全に遮断できる上限」。回路電圧が定格を超えると溶断時にアークが切れず危険です。
- 遮断容量 ≧ 想定短絡電流 — 商用電源の一次側など短絡電流が大きい箇所は高遮断容量(H)品を選びます。
使い方・選び方のポイント
使用場面
電子機器・家電の修理での管ヒューズ交換、自動車の電装トラブル・アクセサリー取り付けでのブレードヒューズ確認、回路設計での保護部品選定に使います。
よくある間違い
①切れたら大きい定格に交換する(保護が働かず発火リスク)、②F指定の機器にT形を入れる(保護が遅れる)・T指定にF形を入れる(起動のたびに切れる)、③自動車用(直流32V定格)をAC100Vに使う、④遮断容量を無視してガラス管(L)を電源一次側に使う、⑤ミニと低背の形状違いを見落とす — いずれも定番の事故原因です。
選び方のコツ
①元のヒューズの表記(例: T2AL250V)をそのまま読み替えて同一仕様を選ぶ ②突入電流のある機器はT/TT ③定格電圧・遮断容量は「以上」なら可、「未満」は不可 ④自動車用は色+刻印+形状の3点確認。
原理・背景: ヒューズはなぜ「遅れて」切れるのか
ヒューズの可溶体は、電流によるジュール熱(I²R)で温度が上がり、融点に達すると溶断します。発熱量は電流の2乗×時間(I²t)に比例するため、過電流が大きいほど短時間で、小さい過電流ならゆっくり切れるという時間-電流特性が生まれます。定格電流はこの特性上「連続通電しても溶断しない電流」として決められており、定格ちょうどで切れる仕掛けではありません。
速断形(F)とタイムラグ形(T)の違いは可溶体の熱設計です。速断形は細い直線状のエレメントで熱容量が小さく、わずかな過電流でもすぐ融点に達します。タイムラグ形は巻線構造やはんだ接合部などで熱容量・放熱を大きくとり、数ミリ秒〜数十ミリ秒の突入電流では溶断せず、持続する過電流でのみ切れるように作られています。突入電流のI²tと溶断I²tの比較がタイムラグ選定の基本になるのはこのためです。
もう一つ重要なのが遮断容量です。溶断の瞬間、切れた可溶体の間にはアーク(放電)が発生します。短絡電流が遮断容量を超えるとアークが消えずに電流が流れ続け、ガラス管の破裂や発火に至るおそれがあります。セラミック管に消弧材(珪砂)を充填した高遮断容量(H)品は、このアークを砂で冷却・分断して大電流でも安全に遮断します。「上位定格への交換NG」「遮断容量の確認」が繰り返し強調されるのは、ヒューズが回路内で唯一の最終安全装置だからです。
よくある質問
Q1. ヒューズのFとTの違いは?
A. F(Flink)は速断形で、過電流に対して素早く溶断します。T(Träge)はタイムラグ形(遅延形)で、電源投入時の突入電流では切れず、持続する過電流で溶断します。トランス・モーター・コンデンサ入力型電源など突入電流が大きい機器にはT形、半導体保護など即応が必要な回路にはF形やFF形を使います。
Q2. T2AL250Vとはどういう意味ですか?
A. T=タイムラグ形(溶断特性)、2A=定格電流2A、L=低遮断容量(Low breaking capacity)、250V=定格電圧250Vという意味です。IEC 60127系の管ヒューズは「特性記号+定格電流+遮断容量記号+定格電圧」の順で表記されます。遮断容量がH(高遮断容量)ならT2AH250Vとなります。
Q3. 切れたヒューズを大きい定格のものに交換してもいいですか?
A. 絶対に不可です。ヒューズの定格は配線や機器を保護できる値として設計されており、大きい定格に変えると過電流でも切れず、発煙・発火につながります。交換は「同じ定格電流・同じ溶断特性・同じ寸法・同等以上の遮断容量」が原則です。同じ定格で頻繁に切れる場合は、機器側の異常(過負荷・短絡・劣化)を疑ってください。
Q4. 250V定格のヒューズを12Vや100Vの回路に使えますか?
A. 使えます。ヒューズの定格電圧は「その電圧以下なら安全に遮断できる」という上限値なので、回路電圧が定格電圧以下であれば問題ありません。逆に回路電圧より低い定格電圧のヒューズは、溶断時にアークが切れず危険なので使用できません。なお自動車用ブレードヒューズの多くは直流32V定格のため、AC100V回路には使えません。
Q5. 定格電流ちょうどの電流でヒューズは切れますか?
A. 切れません。定格電流は「連続して流せる電流」であり、溶断するのは定格を一定以上超える過電流が続いたときです。過電流が大きいほど短時間で溶断し、この関係は時間-電流特性(溶断特性曲線)としてデータシートに示されます。実際の選定では周囲温度による低減(ディレーティング)も考慮します。
Q6. ガラス管ヒューズとセラミック管ヒューズの違いは?
A. ガラス管は内部の溶断状態を目視できるのが利点ですが、遮断容量は低め(L)の製品が中心です。セラミック管は中身は見えないものの、消弧材(珪砂)を充填した高遮断容量(H)品が多く、短絡電流が大きい電源一次側などで使われます。交換時は元のヒューズと同じ遮断容量区分以上のものを選びます。
Q7. 自動車のヒューズの定格はどこで確認できますか?
A. 上面の刻印数字と色の2つで確認できます。ブレードヒューズの色はISO 8820で定格ごとに決まっており、5A橙・7.5A茶・10A赤・15A青・20A黄・25A透明・30A緑などと共通化されています。色分けはミニ・低背・レギュラーの各形状で共通ですが、形状(寸法)には互換性がないため、車両のヒューズボックスに合う形状を選びます。
Q8. 遮断容量とは何ですか?
A. ヒューズが安全に電流を遮断できる上限値です。IEC 60127系の管ヒューズでは、L(低遮断容量)は定格電流の10倍または35Aのいずれか大きい方、H(高遮断容量)は1,500Aと規定されています。回路の想定短絡電流が遮断容量を超えると、溶断してもアークが持続して管が破損するおそれがあるため、商用電源の一次側などではH品を使うのが基本です。
関連する早見表
関連規格・出典
- IEC 60127シリーズ — ミニチュアヒューズ(溶断特性・遮断容量・寸法・試験)
- ISO 8820シリーズ — 自動車用ヒューズ(ブレードヒューズの色・寸法・試験)
- JIS C 6575シリーズ — ミニチュアヒューズ(IEC 60127対応の国内規格・参考)
※ 寸法・色は規格に基づく代表値です。実際の交換・選定では、機器の取扱説明書とヒューズ本体の表記(データシート)を必ず確認してください。
最終更新: 2026-07-03