スペック早見表

高力ボルト早見表|F10T・S10Tの標準ボルト張力・孔径・セット構成

鉄骨接合(摩擦接合)に使う高力ボルトF10T(高力六角ボルト)・S10T(トルシア形)のM16〜M30の設計ボルト張力・標準ボルト張力・標準孔径・首下長さの選び方・締付け管理(ピンテール/トルク法/ナット回転法)を一覧。JIS B 1186と日本建築学会公表値に基づく現場向けリファレンスです。

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F10T高力六角ボルトJIS B 1186・10T級(1,000N/mm²)
S10Tトルシア形高力ボルト鉄骨現場の主流・ピンテール破断で確認
M20の標準ボルト張力182 kN設計ボルト張力165kN×1.1
孔径呼び径+2mmM20→22mm(施行令第68条)
再使用不可本締め後はセットごと新品交換
締付け手順一次締め→マーキング→本締め全数マーキング確認

このページについて

高力ボルト(ハイテンションボルト)は、強大な軸力(張力)を導入して母材同士を締付け、接合面の摩擦力で応力を伝達する鉄骨接合の主役です。JIS B 1186の高力六角ボルト(F10T)と、日本鋼構造協会規格JSS II 09のトルシア形高力ボルト(S10T)があり、現在の建築鉄骨現場では締付け確認が容易なS10Tが主流です。

本ページでは、設計・施工管理で毎回参照する設計ボルト張力・標準ボルト張力(日本建築学会公表値)・標準孔径(建築基準法施行令第68条)をサイズ別に一覧化し、セット構成・締付け管理方法・よくある間違いまでまとめています。

メイン表: 高力ボルトの設計ボルト張力・標準ボルト張力・孔径(F10T・S10T共通)

設計ボルト張力・標準ボルト張力は10T級(F10T・S10T)共通の日本建築学会公表値。標準ボルト張力=設計ボルト張力×1.1(締付け時の導入目標)。孔径は施行令第68条による標準値(呼び径+2mm、M27以上は構造耐力上支障がない場合+3mmまで)。

よく使う:
ねじの呼び標準孔径
(mm)
有効断面積
(mm²)
設計ボルト張力
(kN)
標準ボルト張力
(kN)
一次締付けトルク目安
(N・m)
M1618157106117約100
M2022245165182約150
M2224303205226約150
M2426353238262約200
M2730459310341約300
M3033561379417約400

※ 一次締付けトルクはJASS6による目安値です。設計ボルト張力は「0.75×耐力(900N/mm²)×有効断面積」に相当します(10T級)。建築鉄骨の主力サイズはM20・M22です。

首下長さ(呼び長さ)の選定目安

呼び長さ=締付け長さ(締付ける板厚の合計)+下表の加算値が目安(JASS6)。トルシア形は座金が1枚(ナット側のみ)のぶん短くなります。半端な長さは5mm単位で切り上げます。

ねじの呼び高力六角ボルト F10T
加算値(mm)・座金2枚
トルシア形 S10T
加算値(mm)・座金1枚
M163025
M203530
M224035
M244540
M275045
M305550

※ ナット面から突き出るねじ山の余長を含む目安値です。設計図書・製作要領書の指定があればそちらを優先してください。

セット構成(ボルト・ナット・座金の組合せ)

高力ボルトは単品ではなく、トルク係数値を管理した「セット」(ボルト+ナット+座金の組合せ)として製造・出荷され、セット単位で使用します。

種類規格セット構成特徴
F10T
高力六角ボルト
JIS B 1186六角ボルトF10T
+ナットF10
+座金F35×2枚(頭側・ナット側)
引張強さ1,000〜1,200N/mm²・耐力900N/mm²以上。トルク係数値でA種(0.110〜0.150)・B種(0.150〜0.190)に区分。トルク法・ナット回転法で締付け管理。
S10T
トルシア形高力ボルト
JSS II 09
(日本鋼構造協会)
丸頭ボルトS10T(先端にピンテール)
+ナット
+座金1枚(ナット側のみ)
強度は10T級でF10Tと同等。専用シヤーレンチで締付け、所定トルクでピンテールが破断して完了が目視確認できる。現在の鉄骨現場の主流。
F8T
高力六角ボルト
JIS B 1186六角ボルトF8T+ナット+座金2枚引張強さ800〜1,000N/mm²・耐力640N/mm²以上の一段低い強度区分。遅れ破壊の心配がほぼなく、溶融亜鉛めっき高力ボルトのベースとして使われる。
溶融亜鉛めっき
高力ボルト
大臣認定品
(F8T相当)
めっき処理したボルト+ナット+座金のセット屋外露出部・耐候性が必要な箇所用。めっきでトルク係数値が安定しないためナット回転法で締付け管理する。

※ かつて存在したF11T(1,100N/mm²級)は遅れ破壊が多発したため現在は使用されません。セットは未開封のまま保管し、開封後は当日中に使い切るのが原則です。

締付け管理の方法

締付けは3工程で行い、標準ボルト張力(設計ボルト張力×1.1)を導入します。共通手順は①一次締め → ②マーキング → ③本締めです。

①一次締め

プレセット形トルクレンチ等でメイン表の一次締付けトルク(M20・M22で約150N・m)を目安に締付け、部材を密着させます。ボルト群の中央から外側へ向かって締めます。

②マーキング

一次締め後、ボルト先端からナット・座金・母材まで通る一直線のマークを全数に施します。本締め後にこのマークのずれ方を見て、ナットだけが回転したか(正常)・共回り/軸回りがないかを判定します。

③本締め

  • トルシア形(S10T): 専用のシヤーレンチで締付け、所定トルクに達するとピンテールが破断して完了。全数について破断とマークのずれを確認します。
  • トルク法(高力六角ボルト): セットのトルク係数値から標準ボルト張力に対応するトルクを算出し、調整(キャリブレーション)したレンチで締付けます。
  • ナット回転法: 一次締め完了位置からナットを120°(±30°)回転させる方法(ボルト長が呼び径の5倍以下の場合の目安)。溶融亜鉛めっき高力ボルトなど、トルク係数値が安定しにくいセットで用います。

よくある間違い

  • 普通ボルト(中ボルト)との混用 — 高力ボルトは摩擦接合、普通ボルトは支圧接合で耐力の仕組みが別物。同一接合部での混用は不可です。
  • 本締めしたボルトの再使用 — 一度本締めした高力ボルトは再使用禁止。仮ボルトへの流用も不可で、セットごと新品に交換します。
  • 共回り・軸回りの見逃し — ナットと座金、またはボルト自体が一緒に回ると張力が入りません。ピンテール破断だけで判断せず、マーキングのずれで全数確認します。
  • 摩擦面の処理不良 — 接合面は黒皮を除去して自然発錆(赤錆)またはブラスト処理とし、すべり係数0.45以上を確保。塗料・油・ミルスケールが残ると滑り耐力が出ません。
  • 雨ざらし保管・開封放置 — セットのトルク係数値は錆や乾燥で変わります。未開封のまま保管し、開封したセットは当日中に使用します。
  • 仮ボルトの本数不足 — 建方時の仮ボルトは中ボルト等を用い、ボルト一群の1/3程度かつ2本以上が目安(JASS6・混用接合部は1/2程度かつ2本以上)。高力ボルト本体を仮ボルトに使ってはいけません。

摩擦接合の原理と高力ボルトの背景

高力ボルト摩擦接合は、ボルトに導入した強大な軸力で板同士を締付け、接合面に生じる摩擦力で応力を伝える仕組みです。すべり耐力は「すべり係数(0.45)×ボルト張力×摩擦面の数」で決まるため、設計で前提とした張力を施工で確実に導入すること摩擦面の品質確保が構造性能に直結します。ボルト孔とボルト軸の間には隙間(標準孔径=呼び+2mm)がありますが、摩擦で伝達している限りボルト軸には力がほとんど作用しません。

標準ボルト張力が設計ボルト張力の10%増しに設定されているのは、締付け直後から生じる張力低下(リラクセーション)や施工ばらつきを見込んで、供用中も設計張力を下回らないようにするためです。また、高強度鋼材は静的な強度が高いほど水素脆化による「遅れ破壊」に敏感になるため、1,100N/mm²級のF11Tは市場から姿を消し、現在は10T級(F10T・S10T)が上限として定着しています。

トルシア形(S10T)が主流になったのは、締付けトルクの管理をボルト自体に組み込んだ合理性によります。先端のピンテールが所定トルクで破断する構造のため、レンチの調整に頼らず締付け完了が目視で全数確認でき、検査記録も残しやすいという施工管理上の利点があります。一方、シヤーレンチが入らない狭所や溶融亜鉛めっき仕様では高力六角ボルト+ナット回転法が引き続き使われています。

使い方・選び方のポイント

使用場面

鉄骨の柱・梁の継手やガセットプレート接合部の設計・積算、施工計画(ボルト長さ・本数の拾い出し)、締付け施工と自主検査、鉄骨製品検査での照合に使います。

選び方のコツ

①通常の建築鉄骨はS10T(トルシア形)を第一候補にする ②屋外露出・めっき仕様は溶融亜鉛めっき高力ボルト(F8T相当)+ナット回転法 ③呼び長さは「締付け長さ+加算値」で拾い、5mm単位に切り上げる ④シヤーレンチが入らない箇所は高力六角ボルトに切り替える ⑤設計図書の指定(セット種類・等級・摩擦面処理)を必ず優先する。

よくある質問

Q1. F10TとS10Tの違いは?

A. F10TはJIS B 1186に規定される摩擦接合用高力六角ボルト、S10Tは日本鋼構造協会規格(JSS II 09)に規定されるトルシア形高力ボルトです。強度はどちらも10T級(引張強さ1,000〜1,200N/mm²)で、設計ボルト張力・標準ボルト張力は共通。S10Tは先端のピンテールが所定トルクで破断するため締付け完了を目視確認でき、現在の鉄骨建方の主流です。

Q2. 標準ボルト張力と設計ボルト張力の違いは?

A. 設計ボルト張力は摩擦接合部のすべり耐力計算に用いる張力です(F10T M20で165kN)。標準ボルト張力は締付け時に実際に導入する目標張力で、設計ボルト張力の10%増し(M20で182kN)に設定されます。締付け後の張力低下(リラクセーション)を見込んだ値です。

Q3. 高力ボルトの孔径はいくつですか?

A. ボルトの呼び径+2mm以下が原則です(M16→18mm、M20→22mm、M22→24mm、M24→26mm)。呼び径27mm以上のボルトは、構造耐力上支障がない場合に+3mmまで認められます(建築基準法施行令第68条)。

Q4. 高力ボルトは再使用できますか?

A. できません。一度本締めした高力ボルトは塑性域近くまで張力を導入しており、再使用すると所定の張力が得られず、遅れ破壊や締付け不足の原因になります。ナット・座金を含めセットごと新品に交換します。本締めしたボルトを仮ボルトに流用するのも不可です。

Q5. ピンテールが破断すれば締付け完了ですか?

A. ピンテール破断は所定トルクが掛かった証拠ですが、それだけでは不十分です。一次締めとマーキングを省略すると、共回り・軸回りや締付け不足を見逃します。本締め後は全数について、ピンテール破断とマーキングのずれ(ナットのみが回転しているか)を確認します。

Q6. F11Tはなぜ使われないのですか?

A. 引張強さ1,100N/mm²級のF11Tは、締付けから時間が経って突然破断する「遅れ破壊」が多発したため、現在は使用されていません。高力ボルトはF10T以下(トルシア形はS10T)を使用するのが原則です。

Q7. 溶融亜鉛めっき高力ボルトとは?

A. 屋外露出部など防錆が必要な箇所に使う、溶融亜鉛めっきを施した高力ボルトです。遅れ破壊を避けるため強度を一段下げたF8T相当(大臣認定品)とし、めっきでトルク係数値が安定しないため、締付けはナット回転法で管理するのが標準です。

Q8. 普通ボルト(中ボルト)と何が違うのですか?

A. 力の伝え方が根本的に異なります。高力ボルトの摩擦接合は、強大な軸力で母材同士を締付け、接合面の摩擦力で応力を伝達します。普通ボルトの支圧接合は、ボルト軸部のせん断力と孔壁の支圧で伝達します。強度・施工管理がまったく異なるため、同一接合部での混用はできません。

関連する早見表

出典・参考

  • JIS B 1186 — 摩擦接合用高力六角ボルト・六角ナット・平座金のセット
  • JSS II 09(一般社団法人 日本鋼構造協会) — 構造用トルシア形高力ボルト・六角ナット・平座金のセット
  • 建築基準法施行令第68条 — 高力ボルト孔径の規定
  • 日本建築学会 JASS6(鉄骨工事)・鋼構造接合部設計指針 — 設計ボルト張力・標準ボルト張力・締付け施工(参考)

※ 設計ボルト張力・標準ボルト張力は日本建築学会公表値、孔径は建築基準法施行令に基づく標準値です。一次締付けトルク・首下長さ加算値はJASS6による目安値で、実施工では設計図書・施工要領書の指定を優先してください。

最終更新: 2026-07-08