スペック早見表

熱電対 早見表(K/J/T/E/R/S/B/N 全8種)・計算ツール

熱電対全8種(JIS C 1602)について使用温度範囲・100℃刻み起電力テーブル(mV, ITS-90基準)・素線材料・識別色・用途・測温抵抗体との使い分けを収録。

このページについて

熱電対(thermocouple)はゼーベック効果を利用した温度センサで、2種類の異なる金属を接合し、両端の温度差で発生する熱起電力(mV)を測定して温度に換算します。本ページではJIS C 1602で規格化されているK型・J型・T型・E型・R型・S型・B型・N型の全8種について、使用可能温度範囲・常用範囲・素線材料・識別色・主な用途・特徴を一覧で比較できます。

計装エンジニア・電気工事士・プラント保全技術者・研究開発者まで、温度センサの選定で迷ったときの一次判断材料としてご活用ください。100℃刻みの起電力テーブル(EMF table)も収録しているため、指示計が壊れた場合のmV値からの逆引き計算や、データロガーから生のmV値で記録された測定値の温度換算にも使えます。

熱電対は安価で-270℃の極低温から+1820℃の超高温まで幅広く対応する反面、Pt100(測温抵抗体)に比べて精度・長期安定性で劣るため、用途に応じた使い分けが重要です。後段の「熱電対 vs Pt100」セクションも参照してください。

起電力 ↔ 温度 変換

補足・出典

ITS-90 / JIS C 1602:2015準拠。100℃刻みデータ間は線形補間(精密計算にはJIS規格多項式を使用)。冷接点0℃基準。温度入力→mV更新、mV入力→温度更新。

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熱電対種類一覧(全8種)

型式素線材料(+/−)使用可能範囲常用範囲識別色 (+/−)主な用途特徴・備考
K型クロメル-アルメル(CA) / Ni-Cr/Ni-Al-270〜+1372℃0〜+1100℃+青 / -白(JIS)最汎用。工業・電気炉・空調・一般産業酸化雰囲気◎、硫黄雰囲気×
J型鉄-コンスタンタン(IC) / Fe/Cu-Ni-210〜+1200℃0〜+750℃+赤 / -白(JIS)樹脂成形・還元雰囲気・水素環境安価、鉄が酸化しやすい
T型銅-コンスタンタン(CC) / Cu/Cu-Ni-270〜+400℃-200〜+350℃+茶 / -白(JIS)低温・食品・冷凍・精密測定低温域で高精度、湿気◎
E型クロメル-コンスタンタン(CRC) / Ni-Cr/Cu-Ni-270〜+1000℃-200〜+900℃+紫 / -白(JIS)低温・中温で高感度熱起電力最大(感度最高)。常磁性
R型白金ロジウム13%-白金 / Pt-13Rh/Pt0〜+1768℃0〜+1600℃+黒 / -白(JIS)高温精密測定・製鉄・セラミックス高価。酸化雰囲気◎、金属蒸気×
S型白金ロジウム10%-白金 / Pt-10Rh/Pt0〜+1768℃0〜+1600℃+黒 / -白(JIS)IPTS標準温度計・半導体・精密Rと類似で微差、歴史的標準
B型白金ロジウム30%-白金ロジウム6% / Pt-30Rh/Pt-6Rh0〜+1820℃+600〜+1700℃+灰 / -白(JIS)超高温・ガラス溶解・特殊炉冷接点補償不要(常温近傍で感度低)
N型ニクロシル-ナイシル / Ni-Cr-Si/Ni-Si-Mg-270〜+1300℃0〜+1250℃+橙 / -白(JIS)K型の改良版、長期安定性K型より耐久性高・高温安定

起電力テーブル(100℃刻み, 冷接点0℃, 単位 mV)

ITS-90 / JIS C 1602:2015 準拠。温度から起電力を読み取り、指示計のmV値から逆引きで温度を求められます。

温度(℃)K型J型T型E型R型S型B型N型
-200-5.891-7.890-5.603-8.825-3.990
-100-3.554-4.633-3.379-5.237-2.407
00.0000.0000.0000.0000.0000.0000.0000.000
1004.0965.2694.2796.3190.6470.6460.0332.774
2008.13810.7799.28813.4211.4691.4410.1785.913
30012.20916.32714.86221.0362.4012.3230.4319.341
40016.39721.84820.87228.9463.4083.2590.78712.974
50020.64427.39336.9994.4714.2331.24116.748
60024.90533.10245.0935.5835.2391.79120.613
70029.12939.13253.1126.7436.2752.43024.527
80033.27545.49461.0177.9507.3453.15428.455
90037.32651.87768.7879.2058.4493.95732.371
100041.27657.95376.37310.5069.5874.83336.256
110045.11963.79211.85010.7575.77740.087
120048.83869.55313.22811.9516.78343.846
130052.41014.62913.1597.84547.513
140016.04014.3738.956
150017.45115.58210.099
160018.84916.77711.263
170020.22217.94712.433
180013.591

熱電対の原理

2種類の異なる金属を接続し、両端に温度差があると「ゼーベック効果」により起電力(熱起電力)が発生します。これを測定して温度に換算する温度センサが熱電対です。

起電力 V ∝ ΔT (温度差) 実際は非線形のため多項式近似または表から読み取る

測定には基準側(冷接点)の温度を知る必要があります。通常は指示計内蔵の温度センサで自動補償(冷接点補償)を行います。

熱電対 vs Pt100(測温抵抗体)の使い分け

項目熱電対Pt100 (測温抵抗体)
規格JIS C 1602JIS C 1604 / IEC 60751
温度範囲-270〜+1820℃(型により)-200〜+850℃
精度±0.5〜5℃(型とクラスによる)±0.1〜0.5℃(高精度)
応答速度速い(ms単位)遅い(数秒)
安定性(長期)ドリフトあり良好
機械的強度細い線で壊れにくい外力に弱い
信号mV(微小)→増幅必要Ω(明確)→4線式で高精度
配線補償導線必須(両端同じ材質)通常銅線でOK
コスト安価(特にK/J/T)やや高価
推奨用途高温・広範囲・応答速度重視中低温・高精度・安定性重視

種類別 選定の目安

用途推奨型理由
一般工業(-200〜+1100℃)K型最汎用・安価・広範囲
樹脂成形・乾燥炉J型0〜750℃で安価・還元雰囲気に強い
冷凍・冷蔵・精密低温T型-200〜+350℃で高精度
低温高感度E型熱起電力が最大(感度◎)
高温精密(〜1600℃)R型 / S型白金ロジウム・精密耐久
超高温(1600〜1700℃超)B型白金ロジウム・ガラス溶解炉
K型の代替で長期安定N型Kと類似・ドリフト少ない

精度クラス(JIS C 1602)

クラスK型の許容差用途
クラス1 (精級)±1.5℃ または ±0.4%(どちらか大)標準・精密測定
クラス2 (普通級)±2.5℃ または ±0.75%一般工業用
クラス3 (特殊低温用)±2.5℃ または ±1.5%-200℃以下の低温

補償導線の色(JIS C 1610)

熱電対本体と指示計を接続する導線は、同じ熱起電力特性を持つ補償導線を使用します。色は熱電対と対応:

  • K型: +青/-白 (新JIS: +緑/-白)
  • J型: +赤/-白 
  • T型: +茶/-白
  • E型: +紫/-白
  • R/S型: +橙/-白(新JIS)
  • B型: 銅線でも代用可(高温側)
  • N型: +橙/-白

IEC規格では異なる色分けのため、輸入機器・輸出設計では要確認。

よくある質問

Q1. 熱電対の種類はいくつある?

A. JIS C 1602で規格化されている熱電対はK/J/T/E/R/S/B/Nの8種類です。最も汎用的なのはK型(クロメル-アルメル)で、工業用途の大半を占めます。高温域はR/S/B型(白金ロジウム系)、低温・高精度域はT型(銅-コンスタンタン)が選ばれます。

Q2. K型熱電対の使用温度範囲は?

A. 最大-270〜+1372℃、常用は0〜+1100℃です。工業用で最も汎用的に使われる熱電対で、酸化雰囲気では長寿命ですが、硫黄を含む環境では劣化が早くなります。

Q3. 熱電対とPt100(測温抵抗体)の使い分けは?

A. 高温(500℃超)・広範囲・高速応答が必要なら熱電対、中低温(-200〜+500℃)・高精度・長期安定性が必要ならPt100が適します。Pt100は精度±0.1℃も実現できますが、温度上限が850℃です。

Q4. 冷接点補償とは?

A. 熱電対は2接点の温度差で起電力を発生するため、測定側と基準側(冷接点/0℃)の温度差が必要です。近代の指示計は基準側温度を内部のサーミスタで自動測定し、ソフトウェアで0℃基準に換算する「冷接点補償」を行います。

Q5. 補償導線と熱電対本体の違いは?

A. 本体は測定部の高温に耐える素線(Pt-Rh等の高価な材料も含む)、補償導線は常温〜中温域で熱起電力特性が本体とほぼ同等の安価な導線です。本体を短くして長距離は補償導線で延長することで、コスト削減と取り回しの向上を図ります。

Q6. 起電力(mV)から温度を逆算するには?

A. JIS C 1602付属書の多項式または表から読み取ります。指示計は自動変換しますが、素のmV値がある場合は「100℃刻みEMF表」+線形補間が実用的です。例えばK型でmV=20.644なら500℃、24.905なら600℃なので、22.000mVなら約532℃と概算できます。

Q7. K型とN型はどちらを選ぶ?

A. 短期的にはK型(安価・入手容易)、長期使用や高温連続運転ならN型(ニクロシル-ナイシル)を推奨します。N型はK型の弱点だった「短距離秩序変態(K-state)」に起因する経年ドリフトを改良した設計で、ドリフト量はK型の1/3程度とされます。

Q8. シース熱電対と裸熱電対の違いは?

A. シース熱電対は素線をMgO等の絶縁粉末と共にステンレスやインコネルの細管に封入したもので、機械的強度・耐食性が高く、曲げ加工も可能です。裸熱電対は素線そのもので、応答速度が最も速いが折れやすく腐食もします。工業現場では大半がシース熱電対です。

Q9. 校正・点検の頻度は?

A. 用途・温度・環境にもよりますが、一般工業用は1年に1回、精密測定用は半年に1回が目安です。製鉄・ガラス溶解など高温連続運転では定期交換(3〜6ヶ月)が一般的。校正は基準器(白金抵抗温度計や標準熱電対)と比較する比較校正が主流です。

Q10. 熱電対の極性を逆にしたらどうなる?

A. 起電力の符号が逆になり、指示計が0℃以下の異常値を表示したり、温度上昇に対して下降表示するなどの誤動作が起きます。配線時は+/-の極性(JISでは+青・-白等)を必ず守り、補償導線も同様に極性を一致させてください。

関連する早見表

出典・参考

JIS C 1602:2015(熱電対), JIS C 1605(シース熱電対), JIS C 1610(熱電対用補償導線), JIS C 1604(測温抵抗体), IEC 60584-1/-2/-3, ITS-90

参考: NIST ITS-90 Thermocouple Reference Tables, 岡崎製作所, 山里産業, 理化工業, チノー 公開技術資料

※ 起電力値はITS-90準拠の代表値。精度要求時は規格原典・メーカー校正値を参照。

最終更新: 2026-04-15

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