スペック早見表

溶接棒の記号早見表|E4316・E4319・E4303の意味と使い分け(JIS Z 3211)

溶接棒の箱に書かれた「E4316」は、E(溶接棒)+43(引張強さ430MPa以上)+16(低水素系)という3パーツの組み合わせです。記号の分解表と、系統ごとの性格の違い(万能のイルミナイト・美観のライムチタニヤ・耐割れの低水素)、棒径×電流の目安をまとめました。

🔥 溶接棒記号 分解ボックス

E被覆アーク溶接棒旧記号はD(電弧棒)
43引張強さ430MPa以上49=490・55=550…
下2桁 19イルミナイト系旧01。万能・技能試験の定番
下2桁 03ライムチタニヤ系薄板・ビード美麗
下2桁 16低水素系厚板・耐割れ。要乾燥
3.2mm棒の電流約120A前後正確な範囲は箱の表示

記号「E4316」を3パーツに分けると

パーツ例の値意味
頭文字E被覆アーク溶接棒(Electrodes)。旧JISでは電弧棒の「D」だった
数字の上2桁43溶着金属の引張強さの区分。43=430MPa以上(軟鋼用の標準)
数字の下2桁16被覆剤(フラックス)の系統。16=低水素系

※ JIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)による。強度区分は43/49/55/57/59/62/69/76/78…と続き、高張力鋼用ほど大きくなります。

表1: 被覆剤の系統と性格(軟鋼用E43XX)

よく使う:
記号系統得意なこと不得意・注意主な使いどころ
E4319
(旧D4301)
イルミナイト系アークが強く溶込みが深い。全姿勢OK。日本生まれの万能型スラグはやや剥がれにくい一般構造物全般・技能試験の定番
E4303
(旧D4303)
ライムチタニヤ系スラグ剥離が良くビードが美しい。扱いやすい深い溶込みは苦手薄板・外観重視の溶接
E4313
(旧D4313)
高酸化チタン系アーク安定・光沢のあるビード。再アーク容易溶込みが浅く、機械的性質は控えめ薄板・化粧盛り・仮付け
E4316
(旧D4316)
低水素系水素分が少なく耐割れ性・X線性能が最良再アークが難しい。吸湿厳禁・要高温乾燥厚板・拘束の大きい継手・重要部材

※ 系統ごとの性格は一般的な傾向です。個々の銘柄の適用姿勢・性能はメーカーカタログ(神戸製鋼・日鉄溶接工業等)の銘柄表が正です。

表2: 棒径と溶接電流の目安

棒径電流の目安主な用途感
φ1.6mm約50Aごく薄い板・補修
φ2.0mm約70A薄板
φ2.6mm約100A薄〜中板。DIY・小型機でも扱いやすい
φ3.2mm約120A中板。現場の標準径
φ4.0mm約170A厚板・高能率

※ あくまで平均的な目安です。適正電流は系統・溶接姿勢(立向・上向は低め)・板厚で変わり、正確な範囲は溶接棒の箱・カタログに径ごとに記載されています。低水素系は使用前の高温乾燥が前提で、乾燥温度・時間・大気放置の許容時間はメーカー指定に従ってください。

よくある間違い

  • 低水素棒を袋から出してそのまま使う — 吸湿した低水素棒は耐割れ性能が出ません。乾燥器での高温乾燥と携行缶での管理が前提。
  • 「D4301の指定にE4319を使っていいか迷う」 — 同じイルミナイト系の新旧記号です(D→E、01→19)。読み替えの最終確認は設計・監理者へ。
  • 高張力鋼に43区分の棒を使う — 母材強度に対して溶着金属が弱くなります。49・55…と母材に合った強度区分を。
  • 電流を上げれば速く付くと上げすぎる — アンダーカット・ブローホールの原因。箱に書かれた径ごとの範囲内で。
  • 溶接記号と溶接棒記号の混同 — 図面の△や矢印は溶接記号、棒の選定はこのページ。別の体系です。

記号体系のしくみ

この記号の設計思想は「強度はメニューの数字、性格は下2桁」という分業です。上2桁の強度区分は母材に合わせて機械的に決まる一方、下2桁の被覆剤は同じ強度でもまったく性格の違う棒を生みます。被覆剤は燃えてガスとスラグになり、大気(酸素・窒素・水分)から溶融金属を守るシールドの役目——何を混ぜるかで、アークの強さも、ビードの顔も、割れへの強さも変わるわけです。低水素系だけ管理が厳格なのは、守るべき相手が「水素による低温割れ」という時限爆弾だから。

2000年代の改正でDがEに、イルミナイトの01が19に変わったのはISOとの整合のためで、現場には新旧の記号が今も同居しています。図面側の記号は溶接記号早見表、母材の規格は鉄鋼・金属材料、ガス溶断まわりの容器はボンベの色とあわせてどうぞ。

よくある質問

Q1. 溶接棒のE4316はどういう意味?

A. E=被覆アーク溶接棒、43=引張強さ430MPa以上、16=低水素系。E4319ならイルミナイト系、E4303ならライムチタニヤ系です。

Q2. イルミナイト系とライムチタニヤ系はどう使い分ける?

A. 溶込み重視・万能ならイルミナイト(E4319)、薄板・ビード外観重視ならライムチタニヤ(E4303)が一般的な使い分けです。

Q3. 低水素系(E4316)はどんなときに使う?

A. 厚板・拘束の大きい継手・割れを避けたい重要部材。耐割れ性最良ですが、使用前の高温乾燥と吸湿管理が必須です(条件はメーカー指定)。

Q4. 棒径と電流はどう合わせる?

A. 目安で1.6mm≒50A・2.0mm≒70A・2.6mm≒100A・3.2mm≒120A・4.0mm≒170A。姿勢・板厚で変わるため正確な範囲は箱の表示が正です。

Q5. 昔のD4301と今のE4319は同じもの?

A. 同じイルミナイト系の新旧記号です(D→E、01→19)。古い図面の指定は現行記号に読み替えます(最終確認は設計・監理者へ)。

Q6. 43より大きい数字(E49・E55など)は何?

A. 溶着金属の引張強さの区分で、49=490MPa以上、55=550MPa以上…と高張力鋼用に続きます。母材強度に合わせて選ぶのが原則です。

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出典・参考

  • JIS Z 3211(軟鋼、高張力鋼及び低温用鋼用被覆アーク溶接棒)・日本溶接協会(JWES)の規格解説 — E記号への変更(D→E・01→19)、引張強さ記号表(43=430MPa以上〜78J)
  • 溶接材料メーカー・溶接資材商社の技術資料 — 系統別の特徴、棒径×電流の目安

※ 本ページは記号の読み方と一般的な性格を引くための早見表です。実際の溶接棒の選定・溶接条件・乾燥管理は、設計図書・施工要領書・メーカーカタログの指定が正であり、構造物の溶接は資格・法令の要求に従ってください。

最終更新: 2026-08-20