グリスの種類・ちょう度早見表|NLGI番号と増ちょう剤の使い分け
グリス(JISでは「グリース」)の硬さを表すちょう度番号(NLGI番号)No.000〜No.6の混和ちょう度範囲(JIS K 2220)と、リチウム・ウレア・カルシウムなど増ちょう剤別の使用温度目安・特徴を一覧化。ベアリング・シャシー・高温部の使い分け、異種グリス混用の注意、給脂量の目安まで、設備保全・機械設計・整備の現場で必要な情報に即答します。
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このページについて
グリスは基油(潤滑油)を増ちょう剤で半固体状に保持した潤滑剤で、硬さはちょう度番号(NLGI番号)、性格は増ちょう剤の種類と基油の種類でほぼ決まります。本ページは、JIS K 2220(グリース)に規定された混和ちょう度の範囲と、増ちょう剤別の使用温度目安・特徴、代表的な使い分けを一覧化した早見表です。
「ちょう度No.2ってどのくらいの硬さ?」「リチウムとウレアはどう違う?」「ベアリングにはどれ?」「違う銘柄のグリスを継ぎ足していい?」といった、設備保全・機械設計・車両整備で頻発する確認に即答できる構成です。
下の入力欄に「No.2」「リチウム」「高温」「集中給脂」などと入力すると、表1〜2の行を絞り込めます(未入力で全表示)。
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表1: ちょう度番号(NLGI番号)と混和ちょう度(JIS K 2220)
ちょう度はグリスの硬さ(変形しにくさ)を表す指標です。番号が大きいほど硬く、測定値の混和ちょう度は小さくなります。一般用途の標準はNo.2です。
| ちょう度番号 | 混和ちょう度 | 状態 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| No.000 | 445〜475 | 半流動状(最も軟らかい) | 集中給脂、減速機・ギヤボックス(半流動グリス) |
| No.00 | 400〜430 | 半流動状 | 集中給脂、密閉ギヤ |
| No.0 | 355〜385 | きわめて軟らかい | 集中給脂、低温環境、給脂ポンプ圧送用 |
| No.1 | 310〜340 | 軟らかい | 集中給脂、低温環境、シャシー |
| No.2 | 265〜295 | 中間(標準) | 転がり軸受全般・万能グリス(最も標準) |
| No.3 | 220〜250 | やや硬い | 高速・高温の軸受、密封形軸受、漏れやすい箇所 |
| No.4 | 175〜205 | 硬い | 低速軸受の漏れ防止、特殊用途 |
| No.5 | 130〜160 | 非常に硬い | 特殊用途 |
| No.6 | 85〜115 | きわめて硬い(ブロック状) | ブロックグリス(特殊用途) |
※ 混和ちょう度はJIS K 2220の規定値。25℃で試料を60回混和した直後に規定の円すいを5秒間進入させ、その深さを0.1mm単位で表した値です(数値が大きい=軟らかい)。
表2: 増ちょう剤の種類と特徴
同じちょう度でも、増ちょう剤の種類によって耐熱性・耐水性・寿命が大きく変わります。使用温度は製品(基油・添加剤)により異なる目安値です。実際の選定は必ず製品データシートの値によってください。
| 増ちょう剤 | 使用温度の目安 | 耐水性 | 特徴・主な用途 |
|---|---|---|---|
| リチウム石けん | -30〜+130℃程度 | 良好 | 万能(マルチパーパス)。耐熱・耐水・機械的安定性のバランスが良く、転がり軸受・シャシーなど最も広く使われる標準グリス |
| リチウムコンプレックス | -30〜+150℃程度 | 良好 | リチウムの耐熱性を高めたタイプ。高温・高荷重部、ハブベアリングなど |
| ウレア(ポリウレア) | -30〜+150℃程度(製品により+180℃) | 良好 | 高温・長寿命。酸化安定性に優れる。電動機軸受、等速ジョイント、鉄鋼・製紙設備など |
| カルシウム石けん | -10〜+60℃程度 | 優 | 耐水性に優れる。シャシーグリス(カップグリス)。耐熱性は低く高温部は不可 |
| カルシウムコンプレックス | -20〜+150℃程度 | 優 | カルシウム系の耐熱を改善し極圧性も持つ。高荷重部 |
| アルミニウムコンプレックス | -20〜+150℃程度 | 優 | 耐水・付着性が良い。食品機械用グリスのベースにも使われる |
| ナトリウム石けん | -20〜+130℃程度 | 劣る | 繊維状(ファイバーグリス)。耐水性が悪く水のかかる箇所は不可。旧来のギヤ・軸受用 |
| ベントン(有機化ベントナイト) | 高温向き(明確な滴点を持たない) | 良好 | 非石けん系(無機系)。高温・低速部向き。上限温度は基油の耐熱で決まる |
| フッ素系(PTFE) | -40〜+250℃程度 | 優 | フッ素油と組み合わせた耐熱・耐薬品の最高クラス。高価。特殊環境用 |
※ 使用温度はあくまで一般的な目安です。同じ増ちょう剤でも基油(鉱油/合成油)と添加剤によって範囲は大きく変わります。
基油の種類(鉱油と合成油)
グリスの潤滑性能の主役は増ちょう剤ではなく基油です。基油には大きく鉱油(ミネラルオイル)と合成油があります。鉱油は価格と性能のバランスが良く、一般産業用グリスの大半を占めます。合成油はさらに広い温度範囲・長寿命が必要な場合に使われます。
- 鉱油 — 一般用途の標準。常温付近の汎用機械にはこれで十分な場合がほとんど
- 合成炭化水素油(PAO) — 低温流動性と耐熱のバランスが良い。広温度範囲・長寿命用途
- エステル系 — 低温特性・耐熱性が良い。高速軸受用など
- シリコーン系 — 耐熱・耐寒に優れるが油膜が薄く、高荷重の鋼同士の転がり接触には不向き。樹脂・ゴム部品の潤滑に多用
- フッ素油 — 耐熱・耐薬品性の最高クラス。高価で、真空・薬品環境などの特殊用途
また、基油には粘度(硬さとは別の概念)があり、高速・軽荷重には低粘度基油、低速・高荷重には高粘度基油が基本です。ちょう度(グリス全体の硬さ)と基油粘度(中の油のねばさ)は別物なので混同しないよう注意してください。
使い分けの目安(どこに何を使うか)
| 使用箇所 | 推奨の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 転がり軸受(一般) | リチウムグリス No.2 | 汎用の標準。温度・速度が普通の範囲ならまずこれ |
| 電動機の軸受・高温長寿命 | ウレアグリス No.2〜3 | 高温での酸化安定性・長寿命に優れる |
| シャシー・足回り(ピン・ブシュ) | リチウムまたはカルシウム系 No.1〜2 | 水がかかる箇所は耐水性重視。摺動部にはモリブデン配合も |
| 高温部(炉回り・乾燥機など) | ウレア/リチウムコンプレックス/ベントン/フッ素系 | 温度域に応じて選定。製品の使用温度範囲を必ず確認 |
| 集中給脂装置の配管系 | No.000〜No.1 | ポンプで圧送できる軟らかさが必要 |
| 高荷重・低速の摺動面/スプライン | モリブデン(MoS2)配合グリス | 高速の転がり軸受には一般に不向き |
| 食品機械(偶発的接触の可能性がある箇所) | 食品機械用として認証された専用グリス | 一般グリスの流用は不可。認証区分を確認 |
※ 上表は一般的な目安です。機器メーカーが銘柄・給脂量・給脂間隔を指定している場合は必ずそれに従ってください。
異種グリスの混用はNG(最重要)
グリス選びで最も重大なトラブル源が異なる種類のグリスの混用です。増ちょう剤の種類が異なるグリスが混ざると、相性によっては増ちょう剤の構造が壊れて軟化・硬化・離油(基油の分離)が起こり、グリスが流れ出したり潤滑不良で軸受が焼き付いたりします。
- 継ぎ足し給脂は同一銘柄が原則。「同じリチウム系だから大丈夫」とは限らず、添加剤の組み合わせで不適合になる場合もあります。
- 銘柄を切り替えるときは、可能な限り旧グリスを除去・洗浄してから新グリスを充填します。分解できない箇所では、短い間隔で多めに給脂して旧グリスを押し出す置換給脂を行い、しばらく状態を監視します。
- 混用の可否(コンパチビリティ)はグリスメーカーが適合表を公表している場合があります。判断に迷う場合はメーカーに確認してください。
給脂の基礎(量・間隔・方法)
- 充填量の目安 — 転がり軸受では軸受内部の空間容積の1/3〜1/2程度が目安。詰めすぎは撹拌抵抗による発熱・軟化・漏えいの原因になります(低速軸受では全充填とする場合もあります)。
- 給脂間隔 — 回転速度・温度・環境で大きく変わります。温度が高いほどグリス寿命は短くなるため、高温部は間隔を短くします。機器メーカーの指定値が最優先です。
- 給脂方法 — グリースニップル経由でグリスガンから給脂するのが一般的。給脂時は排出口(あれば)を開け、古いグリスが押し出されるのを確認します。ニップル周りの汚れは給脂前に拭き取り、異物の押し込みを防ぎます。
- 保管 — 開封後は異物・水分の混入を避け、密閉して冷暗所に保管します。長期保管品は離油していないか使用前に確認します。
使い方・選び方のポイント
使用場面
設備保全の給脂計画・グリス銘柄の統一、機械設計での潤滑方式選定、車両・建機の整備、購買での代替品検討などで、ちょう度番号と増ちょう剤の確認に使います。
選定の手順
①使用温度範囲・水や薬品の有無・荷重と速度を整理する ②増ちょう剤を決める(標準=リチウム、高温長寿命=ウレア、耐水低温=カルシウム系 など) ③給脂方式と箇所からちょう度番号を決める(手給脂・一般軸受=No.2、集中給脂=No.000〜1、漏れやすい箇所=No.3) ④基油粘度を速度・荷重に合わせる ⑤既存グリスとの相性(混用可否)を確認し、切替時は旧グリスを除去する。
よくある間違い
- 異種グリスの混用・別銘柄の継ぎ足し — 最重要のNG。増ちょう剤の相性次第で軟化・離油し、潤滑不良・焼き付きの原因になります。継ぎ足しは同一銘柄、切替時は旧グリスを除去。
- 「番号が大きい=軟らかい」という誤解 — 逆です。ちょう度番号は大きいほど硬い。混和ちょう度の測定値は軟らかいほど大きいので、番号と測定値の大小は逆になります。
- ちょう度と基油粘度の混同 — ちょう度はグリス全体の硬さ、基油粘度は中の油のねばさ。潤滑性能(油膜)を決めるのは基油粘度です。
- グリスの詰めすぎ — 軸受に満杯に詰めると撹拌発熱で温度が上がり、寿命を縮めます。空間容積の1/3〜1/2が目安(メーカー指定優先)。
- モリブデングリスを高速の転がり軸受に使う — 固体潤滑剤は高荷重・低速の摺動部向き。高速転がり軸受への使用は一般に推奨されません。
- カルシウム系(カップグリス)を高温部に使う — 耐水性は優れますが耐熱性が低く(目安60℃程度まで)、高温部では流失します。
ちょう度と増ちょう剤の仕組み(背景解説)
グリスは「基油+増ちょう剤+添加剤」でできています。増ちょう剤は石けん(金属石けん)や樹脂・無機物の微細な繊維・粒子で、スポンジのように基油を抱え込んで半固体状に保ちます。運転中はせん断を受けて基油がにじみ出し、接触面に油膜を作って潤滑します。つまり潤滑するのは基油、その油をその場にとどめるのが増ちょう剤という役割分担です。だからこそ、増ちょう剤の骨格が壊れる「異種混用」や「過熱」は、グリスの機能そのものを失わせます。
ちょう度(consistency)は、この半固体の硬さを定量化したものです。JIS K 2220では、25℃で試料を60回混和した直後に規定の円すいを自重で5秒間進入させ、進入深さを0.1mm単位で表した値を混和ちょう度とし、その範囲でNo.000〜No.6の9段階に区分します。軟らかいほど円すいが深く入るため数値は大きくなり、ちょう度番号の並びとは逆になります。番号の体系は米国のNLGI(米国潤滑グリース協会)の分類に由来し、世界共通で使われています。
増ちょう剤ごとの性格の違いは、繊維構造の耐熱性・耐水性の差から来ます。リチウム石けんは各性能のバランスが良く「万能」の地位を確立しました。ウレア系は金属石けんを使わない有機化合物系で、高温での酸化安定性に優れるため、メンテナンスフリー志向の電動機軸受や等速ジョイントで主流になっています。一方、昔ながらのカルシウム石けん(カップグリス)は耐水性に優れる反面、構造が水和物で保たれているため加熱に弱いという明確な弱点があります。この「得意・不得意」を理解しておくと、表2の使用温度目安の意味がつかみやすくなります。
よくある質問
Q1. グリスのちょう度No.2とはどんな硬さですか?
A. JIS K 2220で混和ちょう度265〜295と規定された、最も標準的な硬さのグリスです。市販の万能グリスの多くがNo.2で、転がり軸受をはじめ幅広い用途に使われます。迷ったらまずNo.2が基準です。
Q2. ちょう度番号が大きいほど硬い?軟らかい?
A. 番号が大きいほど硬いグリスです。No.000〜No.6の9段階があり、No.000が半流動状で最も軟らかく、No.6が最も硬いブロック状です。一方、測定値である混和ちょう度の数値は軟らかいほど大きくなる(No.2=265〜295、No.3=220〜250)ため、番号と混和ちょう度の大小関係は逆になります。
Q3. 種類の違うグリスを混ぜて使ってもいいですか?
A. 原則NGです。増ちょう剤の種類が異なるグリスを混用すると、相性によっては軟化・硬化・離油が起こり、潤滑不良や漏えいの原因になります。銘柄を切り替えるときは可能な限り旧グリスを除去してから充填し、継ぎ足し給脂では同一銘柄を使うのが基本です。
Q4. ベアリング(転がり軸受)にはどのグリスを使えばいいですか?
A. 一般的な条件ではリチウムグリスのNo.2が標準です。電動機のように高温・長時間運転で長寿命が求められる場合はウレアグリスが使われます。高速軸受にはNo.2〜No.3、集中給脂の配管系にはNo.000〜No.1と、給脂方式・回転速度に応じてちょう度を選びます。
Q5. シャシーグリスとカップグリスの違いは?
A. どちらも足回り(シャシー)用グリスの呼び名で、伝統的にはカルシウム石けんグリス(耐水性が高い)を指します。耐熱性は低い(使用温度の目安60℃程度まで)ため高温になる箇所には使わず、水がかかる摺動部・ピン・ブシュなどに使います。
Q6. モリブデングリスはどこに使いますか?
A. 二硫化モリブデン(MoS2)を配合したグリスで、高荷重・低速の摺動面やピン・スプラインなどに適します。一方、固体潤滑剤の粒子が転動面に影響することがあるため、高速の転がり軸受への使用は一般に推奨されません(メーカーの指定に従ってください)。
Q7. グリスの充填量はどのくらいが適切ですか?
A. 転がり軸受では軸受内部の空間容積の1/3〜1/2程度が目安です。全量詰め込むと撹拌抵抗で発熱し、かえって寿命を縮めます。ただし低速軸受では全充填とする場合もあるなど条件により異なるため、機器・軸受メーカーの指定値を優先してください。
Q8. グリスとオイル(潤滑油)の違いは何ですか?
A. グリスは基油(潤滑油)を増ちょう剤で半固体状に保持したものです。潤滑の主役はあくまで基油で、増ちょう剤は基油を保持するスポンジの役割です。流れ落ちないため密封・保持性に優れる一方、冷却効果や高速性では循環給油(オイル)に劣ります。
関連する早見表
出典・参考
- JIS K 2220(グリース) — ちょう度番号と混和ちょう度の範囲、ちょう度試験方法、グリースの種類・区分
- NLGI(米国潤滑グリース協会)のちょう度分類 — No.000〜No.6の9段階区分(JISのちょう度番号と同一の範囲)
- 増ちょう剤別の使用温度・特徴・給脂量は、グリスメーカー・軸受メーカーの技術資料に共通して示される一般的な目安値に基づく
※ 混和ちょう度の範囲はJIS K 2220の規定値です。増ちょう剤別の使用温度・耐水性・給脂量は製品により異なる目安であり、実際の選定・給脂は製品データシートと機器メーカーの指定を必ず確認してください。
最終更新: 2026-07-11